新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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無窮の剣 …綺虎(2)

離れぬ心が呼びあう…それは



天と地が一つになる処
全てが始まり終わる処

新羅


これはその国の一人の女王と、遥か時の果てまで名のみ伝わる一人の男の物語…





SS 愛してはいけないから


『無窮の剣』…綺虎“キトラ”(2)


*******


ピダムは切れた衾からのぞく燃えるように光る目を見た。
そしてその懐にチラと見える

(あれか!)

綺虎を囲む者共がふいをつかれた体制を立て直し一気に襲いかかってくる。

(これは!この動き並みの私兵ではない、軍事訓練を相当に積んだ者にしかできぬ百戦錬磨の者の動き。)

ピダムは一度に五人を相手に一歩も引かぬ。
恐らく敵から見れば神業に近い鬼神のごとき技であったろう。
ピダムは背後の敵に仰け反るようにして、まるで捻るように剣を繰り出し、足で前方の敵のみぞおちに蹴りを入れる。
蹴り上げられた敵が小屋の壁へ飛ばされる。
ピダムは軽く跳躍し壁を蹴り剣を突き出すように敵の急所を狙う。
次の瞬間それは相手の喉を切り裂き一撃で倒した。
また息もつかずピダムは飛刀の技で数本の小刀を飛ばし敵を寄せ付けない。

綺虎と呼ばれる女は次々と己が味方を倒す冷たい鋼のような確かに美丈夫と言ってよい男を視た。

(誰だ!いや何者!?)

(此処へ来たお前は新羅の…)

「綺虎!お前にそれは渡さぬ」

ピダムは言った。

「公!お急ぎください」

配下の者の新たな敵でも来たかのような逼迫した声がした。

ピダムはチッと舌打ちし舞うように剣を繰り出し目にもとまらぬ速さで綺虎の懐の密書の紐を引っかけるようにして奪い取った。

そして飛び退くように再び高く跳躍した。

「おのれ!待て!」

綺虎の女にしてはやや低いビィーンと響く声が追いかけて来た。

ピダムは配下の者に援護され素早く外に出て地に一瞬耳をつけた。

(これは!この数は!?)

(綺虎、並みのやつではない、あの近づく馬の音からすると高句麗軍か!?)

ピダムはもはやこの場に留まることは得策ではないむしろ行く手も退路も断たれかねないと悟り、配下の者へ退却の合図を送り馬に飛び乗った。

「姫!お止めくだだい、スジョン姫様!」

ピダムは馬を駆けさせようとした、そのとき聴こえてきた敵の言葉に!となり、なおもピダムを追ってきた綺虎を見た。
女にしてはやや大柄だが見ようによっては、いや並みより数段美しい‥長い豊かな黒髪を束ね少し日焼けした肌に黒々と猫のように光る目、厚いぽってりとだが端の締まった唇、しなやかでキリリとした身体つき…。

「お前は、ヨン スジョン?」

「‥お前ごときに名乗る名はもたぬ!」

繰り出される剣を馬上でかわしながらピダムは

「なるほど、綺虎…ヨン スジョン」

「綺虎、たとへ淵蓋蘇文の妹だとしても許さん淵蓋蘇文に伝えよ新羅にこれ以上手出しすれば我が女王は高句麗の敵となるとな」

敵をなぎはらいながらそう言い放ち

「行くぞ!」

そう声を響かせ闇を切り裂く一陣の疾風の如くピダムは馬を駆り立てた。




辺りに秋夜の風が冷たく吹いている。

綺虎いやヨン スジョンは剣を地に突き立てるようにして男が去った方向をじっとみつめた。

「…あれは…誰…?」

スジョンは誰聴くとなくそう呟いた。

そばに控えた黒ずくめの男が

「さきほほど敵が公と申しておりました」

「ああ」

それで?とばかりに即す

「新羅に公は数多おりましょうがおそらくはあの剣の技…新羅随一の武人司量部令の他ありますまい」

「!と言うとあれか、女王の寵臣とかいう」

(寵臣…つまり女王の男ということか……)

スジョンはそこまで考え

(何故こうも…いや…)

「すぐに兄上の兵が来よう…だがこれはこのスジョンが不始末、必ず私が始末を着けると」

「御言葉ですが、姫」

「そなたは残れ」

「後の者は附いてまいれ!」

スジョンはヒラリと栗毛色の馬に乗り敵の去り際のあの許し難い言葉を思いだし血の滲むほど唇を噛んだ。

あの男は冷たくそして少し驚いたような馬鹿にしたような顔で

「お前、俺に抱かれたいのか?…」

「!!な、死ね!」

スジョンはそう答えたが

尚も奴は

「剣は正直だ…」

その声がスジョンの胸に響き渡った時あの男はスジョンの前から消えていた。

スジョンの心に許し難い侮辱を与えて。





ジジジ…と灯りとりの油の燃える音だけが静まりかえった夜の空気を揺らす。

ソラボルではトンマンがまんじりともせずまだ来ぬ知らせを待っていた。



(ピダム…何故戻らぬ…)

(敵の直中か?機密は奪いかえしたか?)

(今何処にいるのだピダム!)



その時、あの女官が人目を憚るように部屋に入ってきた。
そして

「陛下…ヨムジョン様よりこれを…」

女王は奪うように女官の差し出す書状を受けとった。


<陛下、ピダム公より知らせがまいりました。>

と書かれていたそしてそこにはもうひとつ小さな紙が入っており開けると確かにピダムの字で

『あと数日余りで帰環、だが尚も敵あり……』と

トンマンは胸にその小さな紙をギュット握りしめた。

(生きていたか!ピダム…)

トンマンはピダムの文字をじっと見つめた。

(だがまだ敵が…)

女王はすぐにチュクパンを呼び密かに命令を申しつけ瞬時に下した策を実行するためヨムジョンのもとへ急いだ。





ピダムたちは街道を外れ強行に道なき道をただひたすら駆けに駆け抜けていた。

(放った伝令はヨムジョンに無事届いたか…?)


(敵をソラボルへ近づけるわけにはいかぬ…どうしても俺を追うとあらば片付けねば…)


(…陛下は陛下はどうしておられるか…)

急ぐピダムの心に自分を呼ぶ愛しい声とトンマンの別れ際のあの淋しげな横顔が去来した。


常に百済との睨みあいと貴族という内なる敵の直中で今たった一人で…


(トンマン…)


(これ以上一人にさせることなど出来ない…)

そう思うピダムの心は胸に刃を入れられるより鋭く傷んだ。






そして再び迫る敵の気配を振り切るようにピダムは幾つもの夜の闇を越えソラボルへ向けて自らの心をひた走らせていた……













*続きます…。






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この記事のコメント

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2011-11-02 Wed 15:38 | | # [内容変更]
ミンミン様へ


こんばんは ̄(=∵=) ̄


>一気に読み上げた後に、また繰り返し読んでしま う。

わーっ、ありがとうございます。
繰り返し読んでいただけるなんて…そうそうはないような気がいたしまして…

 ̄(=∵=) ̄も少しでもこの『綺虎(2)』では躍動感を感じられるものを書いてみたいと思いミンミン様がそれを感じてくださりうれしいです。

ミンミン様からコメントを頂き、もっともっと素敵な立ち回りを書いてみたいと思う ̄(=∵=) ̄です。


>ドラマ化してくれー見たい見たい見たいと感動しており ます。

褒められすぎ!?とも思いますが ̄(=∵=) ̄素直におお喜びです。


コメントを頂く度にミンミン様がうさこの書くSS を好いていてくださると感じて…本当になんて言ったらいいのか…
ありがとうございす。(深々ぺこん)

2011-11-02 Wed 20:17 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #- [内容変更]
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