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新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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胡美童

音に運ばれ聴こえる…それは



天と地が一つになる処
全てが始まり終わる処

新羅


これはその国の一人の女王と、遥か時の果てまで名のみ伝わる一人の男の物語…





SS 愛してはいけないから

『胡美童』

*******


楊流のそよぐ様、唐春の如。胡美人の舞楽妓、桃花馥郁如。

「近頃あの噂をお聴きになられましたか?」

「貴殿も?」

「いやまさか…」

「いやいや…そのまさか」

「…え!?」

「やはり胡美人ならぬ胡美童!」

「ピダム公は悋気とか…」

「悋気とは、貴殿も恐れを知らぬ。」

「然し言い当て妙!」

「しっ!声が高い、声が高うございます。」

そんな宮中の噂も知らずその頃、女王とピダムは異国の不思議な調べに耳を傾けていた。

「なぁ…ピダムこれ好きなんだ…」

「はぁ…」

「これ昔…砂漠で昔聴いた…懐かしい」

ピダムには聴いたこともない異国のまだ見ぬ国をたしかに感じる不思議な調べであった。

その時その調べが止み、件の美童

「陛下…いかがにございましたでしょう」

優雅に微笑みながら流暢な唐の言葉で女王に話しかけた。

「昔、聴いた音色そのままの美しさだ」

遥か遠い砂漠を見るようにその先から来る幾多の人々に会っていた昔を懐かしむように彼女はそう呟いた。

「ありがとうございます…けれど陛下は、韓の水のごとき麗しさ…サントゥールの響きより直澄んでおられます。」

なかなかこの少年さすがにシルクロードを通りこの新羅まできただけのことはある美童というだけではない真に如才がない。

女王は美しい少年の抜け目のなさにくすくす笑い

褒美を与えるようピダムに合図した。

ピダムは唐錦の袋砂金をぶすりとした顔で渡した。

女王はここ数日この波斯国から来た商隊の少年の弾くサントゥールの音をいたく気に入り毎日宮殿へ呼んではその音色に聞き入っている。

そしてピダムにはよくは解らぬ唐の言葉で何やら話しては笑いあう。

ピダムは面白からぬ日々を送っていた。




「陛下…いたくあの波斯国の少年をお気に入りですが…毎日とは…」

ピダムは少年が辞した後長椅子に身を横たえる女王にそう言った。

「ピダムはサントゥールは嫌いか?」

「そうではなく」

「うーん忙しいからか?司量部令だものな、ふんっ、だからといって、ほらあれだ、異国の文化も大事だぞ!」

「そちらはミセン公の領分です。」

「………」

「つまりミセン公と聴けと?」

「…だから違います」

「?」

「あの少年は?」

「ん?」

ますます話がかみあわない…
ピダムは焦れて女王の側により立ったまま長椅子に寄りかかる彼女の肩に触れながら

「サントゥールの音色より私が琵琶なり笛なりお聞かせいたします。」

「え!?…それこそミセンの領分ではないか」

かなり驚いて彼女はピダムを見た。

「べつにピダムは剣のみではありませぬ」

相変わらずむすっとしたままピダムはそう言った。

(それは知っているお前は頭の回転も大胆で切れる…が音曲とは…)

「五弦琵琶と龍笛ならできます。」

(そっ、それはスゴいがサントゥールと張り合ってどうするのだ…)

「…なら明日は弾き比べか」

女王は面白そうに笑った。

ピダムは

「陛下…明日の前にどうしても聴きたい音があるのですが…」

そう言ってピダムは髪に指を絡ませ引き寄せるようにして深く口づけた。

「う…ん、ぁんん」

「ピダムン…」

女王の甘い声を聴くとピダムは唇を離し

「明日のピダムへの褒美は?」

「…まだ勝ってない」

「勝ちます…ピダムは砂金など及びもつかぬものを望みます。」

強気のピダムの口づけをもう一度受けながら

(ピダムが本当に?)

と、思うのであった。



翌日

女王とピダムと少年それに判じ役としてミセン

少年は何時もどうり優雅に奏で始めた。

砂漠の果てのその先にある波斯国の胡旋舞が見えるような、宝玉の目映い異国の宮殿、咲き乱れる花々の薫りさえしてくるような調べ…

「いや、これはみごと!」

ミセンは驚きと感嘆で少年を誉めそやした。

女王はちらりとピダムを見た。
ピダムは剣を交える前の静けさに似た半眼で無言のままその調べは始まった。
その笛曲はミセンの入れ知恵の相聞曲ではなく吹き過ぎる風の音のように爽やかで優しくそして嵐のように激しくまた守るように強い調べだった。
それは、まるで二人の歩んだ長い道程に吹いた風のようであった。

判じ役のミセンですらピダムの音色に驚きを隠せなかった。

「これは…いやはやこれは…」

ミセンが判じを迷っていると

少年は

「私の負けにございますね…陛下が…」

トンマンの頬に何故かは知らず静かな涙が伝っていた。



旅立ちの時少年は

逸かまた来ることがあるだろうか…と思った。
道が続く最果てのこの国へ
いや帰り着くかも解らぬ旅…けれどこの新羅で見た恋人たちの姿は…少年にとって忘れえぬ旅のひとつとなった…


唐より遥か半島の春は桃花唐より薫り貴し…























*いつも皆様御覧いただきありがとうございます。今回、閑話休題的なSS になっております。
歴史の中の恋人はきっといろいろな人の心に残るのかな…と。

(10月10日、200拍手御礼)

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この記事のコメント

うさこ 様

こちらを読んで、「波斯国」や「五弦琵琶」という言葉に、「うつほ草子」という漫画を思い出したのですが、ひょっとしてご存知でしょうか。SSとは直接関係ないことですみません、あの漫画が大好き(親子でファンです)なもので、知っている方がいたら嬉しいかな、と。
2011-10-17 Mon 21:59 | URL | midorin #PDrP5gew [内容変更]
うさこ様、はじめまして。

昨夜から、むさぼりつくように、うさこ様のSSを読んでます。
まだまだ読んでないものもたくさんあるのですが、どうしてもどうしても、これだけ言いたくて。この「胡美童」に、涙が止まらないんです。もう、何十回も繰り返し読んでますが、そのたび、泣いています。ピダムの演奏のところでじわぁっときて、トンマンの涙で、私も一緒に泣いてしまいます。こんな素敵なお話が書けるなんて、うさこ様、すごいです。正直いうと、うさこ様の文章は私にとっては少々むずかしく、読めない漢字も多々あるんですが、前後の雰囲気でなんとか読み取ってます。でも、すごくすごく、大好きです。余韻を楽しめるんです。これから他のSSも読んで、うさこ様の世界に、どっぷり浸りたいと思ってます。

このコメントを、どこに書こうか迷ったのですが、今回はこちらに書かせてもらいました。たいしたコメントも書けなくてすみません。でもどうしても、「胡美童」への感動を、伝えたかったのです。
2012-02-05 Sun 23:05 | URL | ハルカ #HX7bbD3I [内容変更]
ハルカ様へ

おはようございます

初めまして、うさこでございます(ぺこん)

ハルカ様、うさこの部屋へお越しくださいましてありがとうございます。(にこっ)

>昨夜から、むさぼりつくように、うさこ様のS Sを読んでます。

とっても嬉しいです。
それにすごくお褒め頂きましてドキドキしました。
そんなお言葉を頂いていいの!?と(笑)

>正直いうと、う さこ様の文章は私にとっては少々むずかし く、読めない漢字も多々あるんですが、前後の 雰囲気でなんとか読み取ってます。

そうなんですか…すみません?な所はどうぞ仰有ってください。そのつどできるだけお伝えしたいと思います。

>でも、すご くすごく、大好きです。余韻を楽しめるんで す。これから他のSSも読んで、うさこ様の世 界に、どっぷり浸りたいと思ってます。

今、うさこの小さなシッポが嬉しすぎて揺れています(笑)
うさこのお話は全くの ̄(=∵=) ̄の脳内妄想ですのでいつも“これってどうなのかしら?”とやや心配になりながらup しております。
ですのでハルカ様からのコメントに ̄(=∵=) ̄は勇気づけられました。
ありがとうございます。

>このコメントを、どこに書こうか迷ったのですが、 今回はこちらに書かせてもらいました。たい したコメントも書けなくてすみません。でもどう しても、「胡美童」への感動を、伝えたかったの です。

 ̄(=∵=) ̄の世界のトン&ピも
ハルカ様のように感じてくださる方に巡りあえてとても幸せです。

どうぞまたよければ感想やご意見をお聞かせ下さい。

うさこはハルカ様のまたのお越しをお待ち申し上げます。(ぺこりん)
2012-02-06 Mon 07:13 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #- [内容変更]
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