新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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風の声

逸のことか…それは



天と地が一つになる処
全てが始まり終わる処

新羅


これはその国の一人の女王と、遥か時の果てまで名のみ伝わる一人の男の物語…





愛してはいけないから

『風の声』

*******

夏の涼やかな風が新羅の山々を吹きわたる頃。
ピダムは一人、国仙の眠る太白山にいた。
何処へいくのかとうるさいヨムジョンを言いくるめ、ヨムジョンの差し金か、しつこく付いてくる配下の者を撒いてやっと一人この頂に立った。

彼の師が亡くなってから幾年経っただろう。
今はもう、僅かに形を留めるだけの小さな塚を見た。
呟くようにピダムは言った。

「師匠、まいりました。」

(師匠はこんなに薄情な弟子はもうお見捨てになりましたか?お忘れになりましたか?)

塚に野の花を手向けピダムは膝をおった。

女王が即位してから暫くの年が過ぎ、司量部の長として彼は日々多忙を極めていた。
貴族の不正を取り締まり、国内外の情報は今や彼が集約していると言っても過言ではない。
その手腕は誰もが認め一目置くところとなっている。
女王の腹心の一人として常に傍らにあるにも係わらずその“腹心の一人”にすぎないというところに苛立たずにはいられないのだ。
自分は“ただ一人”になりたいのだとピダムは焦れる自分自身をもて余していた。
そしてここにくれば少しは心を静めることが出来るのではないかと…思いソラボルを一人離れた。

*****

「ピダムを呼んでくれ。」

女王は何時ものようにそういった。

しばらくして

「陛下、恐れながら司量部令殿は留守とのことでございます。」

そう女官は告げた。

「留守?」

女王は眉尻を上げ

(何処へ……)そう思った。

留守、それは不意討ちであった。

考えこむように彼女は手の中にある美しいローマングラスを逆さにしたような風にあてるとえもいわれぬ涼やかな音がする鈴を持ち上げた。
これは昔、公主に復権したころ璽主からもらったものだ。
しばらくぶりに思いだしたこの鈴をこのところ激務が続くピダムを呼び、共に聴こうと思い立ったからだ。

なのにピダムが、いない。

いずれかへ偵察にでも?
いや、自邸に下がるときでさえなにかしらピダムは彼女に告げて行くのだ。
女王はピダムがいない、ただそれだけのことで自身の心が
波立ち揺れていることに戸惑った。

「ピダム、」

我知らず彼女は男の名を呼んだ。

(何処にいるのだ…そばにいろ…)

そんな思いが声にでたのか

「陛下?もう一度公をお探しいたしますか。」

女官は心配気にそう言った。

女王は首を振りもう一度風の鈴を見た。そして

「これを風のあたる場所へかけておくれ。」

そう言ってその音に耳を傾けるように目を閉じた。

女王の閉じた瞳の中にはピダムの彼女だけを見つめる眼差しがあった。

*****

ピダムは風にそよがれながら思う。

(会えば苦しく、会ねば切ない誰かのためになど泣かぬはずの自分を人の心にさせ、ただの男にさせる。)


「ピダム、」


はっ、としてピダムは顔を上げた。

涼しい風の中に彼を捕らえて放さぬトンマンの、彼を呼ぶ声を聴いた気がした。

そして、ピダムは風の中の声に耳を傾け思う。

(この先何があろうと、ただ自分を呼ぶ声の主の元が、唯一自分の在るべき場所なのだと。)


ピダムは太白山を振り返り国仙へ目礼した。
それは亡くしてなおできずにいた、国仙への決別でもあった。


彼は風の声に導かれ、ソラボルへ続く道を急いだ。





*ここではピダムが人を慕う心の全てがトンマンただ一人へとむかっていく流れのひとつを書いてみたかったそういう、うさこの気持ちから発したSS です。

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この記事のコメント

うさこ様、こんにちわv

二人の心の機微が絶妙で、いつの間にかピダムに侵食されているトンマンが凄く頷けました!

心に入り込んでいるピダムを徐々に意識し始めるのかなぁと、妄想が膨らみますv

また、ムンノの前に膝をつくピダム。
自分の心と行く先を再確認して、トンマンの待つ徐羅伐に思いを馳せる。
本当にいろんな出来事があったと思います。

ドラマではミシルの霊廟に入り浸って(?)いたピダムですが、心の中にはいつもムンノがいて、何かにぶち当たったり心の方向性がわからなくなったときなど、ムンノを思い出していたんじゃないかなぁと、思います。
ただ、トンマン=王座に関してはミシルの言葉がリフレインしていたピダムでしたが…。徐羅伐を頻繁に空けられないから、仕方ないんですが。

身体は離れていても、心は風に乗せて傍にいる〜素敵な二人です。

私も切ない二人を書けるよう頑張ります!
2011-08-13 Sat 14:00 | URL | 椿 #- [内容変更]
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