新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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黒白の星

こんばんは

…今回のSS 実はトンマンが出てこないピダムonlyバージョンです。
いいよ、トンピの󾬚物でなくても…という皆様この先をポチッと願います。

秋の夜長の ̄(=∵=) ̄物語り…

SS 愛してはいけないから


『黒白の星』


辺りをうっすらとした秋の夕景が辺りを包み始める頃、通りを入った細い筋に滲むような吊り灯籠の灯りが一つ、其処には酒家“日月”を表す三日月と円の絵字が浮かんでいる…



「お前、こんなところで寄り道してていいのかい?」

「こいつぁ酷い旦那が誘ったんですぜ、そりゃ夕餉の仕度をしているのか煙りがたなびく家々をを見ると…こんな俺でもやっぱり我が家が恋しくなります嬶とやんちゃなガキの待つ粗末ですが暖かな…何処より具合がいい、上等にいやぁ安らぐってやつでしょうかね‥」

「そうさなぁ…お前が言うのも尤もだ、女房が一番具合がいい…白粉の匂いの若い女もたまにゃあいいが、太り肉の膝枕にゃぁかなわねぇ」

「まったくで、俺がこの先禿げようが腹が出ようがカラカラ笑って飯くってよでもって夜は俺でなきゃだめなんだ」

「そうよ、そこが女房のいいとこよ、ま一杯おやり」

とさしつさされつ掛け合い笑う男達の席からそう遠からぬ場所で一人ゆっくりと、熱い酒を手酌で呑む男がいた。
濃灰色の衣に腰に一口の剣、それは見る者が見たならば容易には手に入らぬ倭国の全て一刀の元に切り捨てることの出来る並々ならぬ刄のとわかる。

パシッっと石の音がして

「やー、今回はお前にやられたよ途中まではよかったんだが…」

「はっはっは…」

どうやら先程の嬶談義に花をさかせていた男達の黒白の決着がついたようだ。
この男達、話のわりにはなかなかの腕のようで濃灰色の衣のその男もこの一盤を面白くみていたのだ。
男にはわかっていた結果でもあったが途中なかなか楽しめたので確かにこ二人筋は佳いのであろう。
男の視線に気づいたのか二人のうちの若い方の男が

「旦那、どうだい?」

と指に挟んだ石を上げて来た。
濃灰色の衣の男は

「それでは見物料がわりに一杯奢ろう」

そういって店の女に顎をしゃくり立ち上がった。
立てばスラリとした長身で男達に近づいて灯りが照らし出したその顔はやや浅黒く引き締まっていて男から見ればやたらと憎くげに思うほどの整った顔をしていた。
酒を運んで来た女など頼まれもしないのに酌をしちょっとでも長居したくてか先程酒を運んで来た時は構いもしなかった男二人にも酌をしていったくらいだ。

「旦那はあ妓楼あたりの用心棒かい?それにしてもいい男振りだね、うちの嬶が見たら鼻血でもだしかねねーな」

「まぁ、うちのやつならまず拝むな…」

奢られた上等な酒に気をよくした二人が男に言った言葉は確かにその通りだったようで先程の店の女が頼みもしない酒の魚を持って来てお代はいいからなどとやたらお粗末な色目を使っていった。

男は二人に奢ったものの自分は酒を呑むこともなく盤を見ていたが不意に白石を上辺のひと隅に置いた。

盤上を見た男達はあっ!ともうぅ!ともつかぬ声を出した。

「こうか!」

「こいつぁ……負けたな」

と同時に言い一瞬で濃灰色の衣の男の男をみる目が変わった。

「旦那、何者だい?いや何方です」

「……ああこういっちゃあなんですがただの用心棒には打てない手ですぜ…俺たちもこれでもけっこうやるほうだと思ったが…何方かのお弟子かなにかですか?」

「………別に‥一つ過っていたようだから直してみただけだ」

男達は顔を見合わせた。

「旦那は盤をよみきったってことですね…」

「…よみきった…いやよみきっていた?」

そう言って男達はもう一度盤上を眺めこの男の腕は自分達には太刀打ち出来ぬほどだということが判った。
二人はもう一度顔を見合わせ

「お、お名前は?」

「……ピダム」

そう濃灰色の衣の男がさらりと名乗った。
ピダムは時に市井をフラりと廻ることがある。
普段宮殿にこもりっきりでヨムジョンらのもたらす情報の整理とそれを元に政策を立案したり貴族の不正や陰謀また他国の情勢などに目を光らせているが時にこのように誰知らぬ酒家で気取らぬ酒を呑むこともあるのだった。
それは自らの目で見、耳で聴くことで思いもかけぬ事を知ることもあるからだ。

「ピダム殿…」

「……」

「大した打ち手とお見受けしたのでどうでしょう役不足とは思いますが私と一局打ってはいただけませんか?」

年かさの男が言う。

「………」

昔のピダムなら一局打って金を巻き上げるくらいしただろうが…今はそういった必要もないまた確かに彼らはなかなか面白い打ち手ではあるだろうがピダムの相手として面白いかといえば否である。
そう思いピダムが断りの代わりに錢袋を置い立ち上がろうとした時

「お若い方、そう急ぐこともあるまい…半月城の夜もまだまだ明けぬ、時はまだある……一局どうだ?」

そう急に声を掛けられピダムは声の主を見た。
そこには身なりのよいだが古めかしい衣を纏った老人が一人立ていた。

(何者だ?………気配が無かった…それに半月城と言ったな…)

ピダムの眸が鋭く老人を見た。

「これは、なかなかの相をしている…ますます楽しみな、今夜は面白くなりそうじゃ」

ピダムが否とも諾とも言わぬまにすっかりその気になっているような口ぶりである。
ピダムは断ろうと口を開きかけたが半月城と口にしたことそして気配もせず近づいてきたことこれはピダムほどの使い手にとって近づく者の気配に気づかぬなどということは稀にもないことであった。
ピダムは思い直したように老人を眺め

「何か賭けるか?」

そう言った。

老人は面白そうに髭をなでて笑い

「わしが勝てばお前の命数でも少しばかり貰おうか…お前が勝てば…そうだな…欲しいものを一つやろう」

(お前が勝てば俺の命で俺が勝てば欲しいもの一つとは随分だな…)

ピダムは老人の尊大な物言いに挑戦するように彼は無意識に首をかしげ物騒に笑った。

「ならば必ず貰おう」

そうピダムは言った。

嬶話の男達はなにやら面白いことに出会ったとばかりに席をあけた。
老人とピダムは盤を挟んで向かい合い碁石箱に手をかけた…
驚いたことに互いの石が全て黒石になっている。

それを気にした風もなく老人は

「始めよう…お前に選ばせてやろう黒か白か?」

ピダムは黒ばかりの石を一瞬見つめ沈黙の後

(黒か白かだと!)

「黒だ」

そう言いその応えに老人は頷き微かに笑った。

それからパシッ…パシッと石を打ち合う音だけが響いている。

「おい、一色碁だ」

「ああ鬼神か仙人か、初めて見る…」

嬶話の男達は声をあるかななきかに潜めて盤上を眺め囁き合う。

「恐ろしいな…お前見えるか?」

「まだなんとか…」

夕景はすっかり夜へと変わり店の銀杏の葉が暖をとる為の炎に浮かびあがり夜風に静かに散ってゆく。

老人は脇にあった熱い酒を飲み煮込んだ猪肉をくらい盤上を睨んでいる。
ピダムは石を追うというよりは只老人の打つ手を盤上であたかも繰り出される剣のように鋭いその一手一手を受けながら閃くように盤上に斬り込んでいく、それは一騎討ちのようでもあり大軍を率いる将のようでもあった。

そして天元を中心に無数の黒石が盤を埋めていく…

右辺で激しく打ち合いが始まる。

「凄いことになってるみたいだが…さっぱりだ‥」

「ああ、もうどっちがどうなんだか…うう…黒か白か?いや黒と黒か‥うーーん」

「…………」「…………」

二人はこの魔物のような一局に最早言葉も無い。

そうした盤上での戦が始まってからいったいどのくらい時がたっただろう…
舞い散る銀杏葉が金色に地を染めてゆく。


そして鋭く一手を打つ音が響き勝負がついたようであった。

どっちが勝ったか検討もつかず男達がピダムと老人を代る代る見つめる。

「百年ぶりか、いや久しぶりに負けたが楽しい一局じゃった…今は輔星と開陽が重なり分かれる時か…約束通りお前の欲しいものを一つやろう…申してみよ」

「………」

(百年ぶり?随分大袈裟な爺だ)

ピダムはそう思ったが何も言わずただ天元を指差した。

「ほほぅー玉座か…‥」

そういって老人は髭を二三度撫でた。

「いや、これだ」

ピダムは天元にあった石を一つ取り上げた。

「これを貰う」

老人は笑った。

「それを盤から離すと局面がかわるぞ」

「欲しいものは只一石だけだ」

そういって立ち去ろうとしたピダムに老人は頷きもう一つ盤上の石をピダムに投げて寄越した。

「天元の開陽は確かにお前のものだ、それは天枢だ持っていけ開陽なき盤上にお前の石も必要あるまい」

ピダムは弧を描くその石を空に手を伸ばし掴んだ。

彼の掌の中にはいつの間にか白石に戻った開陽と黒い天枢の石があった。





秋の夜空に北斗星が輝き酒家日月の夜はなおも更けてゆく。
だがそこにはもうはあの老人の姿も、黒白の星を持つピダムの姿もない、通りには男が二人家路を急ぐ姿があるばかりであった。







*『黒白の星』(こくびゃくのほし)お読み頂きましてありがとうございました。

ちょっと番外編って気もしなくはないですが開陽トンマン天枢ピダム輔星チョンミョンのつもりで本編に入れました。

一色碁は前からなんとなく気になっていて…かなり以前に何方かへリクエストさせて頂いたのですがボツ(笑)となりそのまま忘れていたのですが不意に気になりだして…の作です。

まぁ他所でボツになったネタを書くっていうのもなー…とも思いましたが…ま、いっかー(笑))です。

ねっ?


ぺこりん󾬌



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