新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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無窮の剣…雷鳴

柄の無い希なる剣がある…それは



天と地が一つになる処
全てが始まり終わる処

新羅


これはその国の一人の女王と、遥か時の果てまで名のみ伝わる一人の男の物語…





SS 愛してはいけないから

『無窮の剣』…雷鳴

*******

夏の終わりの空はにわかに轟く雷鳴と空を裂くような稲妻が走り、続いて急激に叩きつけるような雨が何かを突き破るように降りだした。

チュンチュはその音に眉をひそめ、女王を見た。
彼女は悲鳴こそ上げはしなかったが怯えたような目をしてチュンチュの側へ寄った。

「!チュ、チュンチュ…」

「叔母上、大丈夫です、ここにいます…」

「!!きゃっ…何…ぅわ…」

まるで少女のように怖そうに女王は彼にすがりつくかのように身を寄せた。

先ほどまで聡明で冷静な判断をもって次々にチュンチュの考えを看破し適切に導く助言を与える女王然とした様子など今、雷に怯える彼女からは想像もつかない。

チュンチュは母の妹のこの女王の不意に見せる可愛らしさにいつも目をみはる。
そして今もその可愛らしさに瞠目していることは彼女に気づかれぬよう、守るように手を握った。



「陛下!大丈夫ですか!?」

と言いながら扉を開けてアルチョンが入ってくる 。
女王の雷嫌いを花郎のころよりそばにいて知っているアルチョンは雷鳴に女王が怯えはせぬかと駆けつけたのだ。

「あ、アルチョン」

その声に安堵したように振り返り

「早く、アルチョン!」

と言いながら自分が恐いくせにアルチョンにチュンチュを守れ!というような仕草をした。
その時もう一度暗い空に稲妻が怪しい閃光を走らせつんざくような音が響いた!!

「!!」

「陛下!」

現れたもう一人の声の主はチュンチュの手からなんなく女王を奪いその胸に彼女を抱き締めた。

天から地まで揺らすようなその中でチュンチュの双眼は引きつったようにそんな二人を見た。

現れた男…ピダムは女王の
目と耳を塞ぐように怯え震える彼女を懐深く包み込むように確りと抱き締めていた。

しばらくの間ピダム以外の二人の男は誰はばからぬようなピダムの行為に無言の抗議とギリギリする目を向けていたが女王が安心しきったようにピダムに身を預けているため言葉を紡ぎだせずにいた。

ようやっと

「陛下はこの侍衛府令がおまもりする、ピダム公」

そうアルチョンは言い女王をピダムから引き剥がした。

ピダムはアルチョンを睨みつけたが女王もさすがにこのままではまずいと感じ

「ピダム心配ない、侍衛府令…」

と二人を抑えるように言い、じっと無言でいるチュンチュを見た。

無言の空間を破り

「……陛下…先ほどの話…やはり司量部令がよいかと」

そう言うチュンチュの双眼は底のない暗い穴のような目であった。

「‥チュンチュ…」

日頃の彼女に向ける彼の顔とはまったく別の顔を一瞬見て女王は雷鳴より恐ろしい何かが彼女の背を震わせるのを感じた。


「先ほどのお話とは? 陛下?」

ピダムは女王とチュンチュに目をあてた。

「チュンチュ、私はまだ
決めておらぬ」

「陛下‥」

女王はチュンチュの言葉を遮り

「司量部令は残れ、あとの者は下がれ」

打ち切るように女王は命じた。



先だって司量部よりあがってきたひとつの案件があった。

近頃高句麗からの商団の動きに不審な点あり、と。
しかもその商団どうやら軍事機密を探る者どもで、裏に高句麗の大物とこの新羅の高官がかかわっている。

「おまえが言うあの高句麗の商団の件、あれをチュンチュが追わせろと…」

「お話になったのですか」

「チュンチュの考えを聞こうと思って…司量部だけで解決できる一件ではなかろう…」

「しかしあれは司量部の管轄、新羅の情報に関わる大事…」

「そうだ、事は見逃せぬ、必ず突き止めねば」

「チュンチュ公が言った私が良いとはあれはいったい?」

「…まだ決めてはおらぬ、…商団を追い敵地へ潜入し機密を守りこの流れを断ち糸を引くものを暴く」

「チュンチュ公はそれを私にと…」

(敵地へ…司量部というよりこのピダムにそれをせよと……なるほど…)

「わかりました。陛下、元は司量部が探りおります一件、たしかに
公の申されるとうりこのピダムが適任でございましょう。」

(チュンチュおまえの目的が何であろうとこちらもそれを使わせてもらう)

「ピダム!」

「陛下、お命じ下さい、臣ピダム必ず任を遂行いたす所存にございます。」

「……ピダム」



あの一件から数日後――――


「明日立つか」

「はい、陛下」

女王とピダムは宮殿の睡蓮の咲く池のほとりに立っていた。
夏の夜風が眠る花々の香りを伝えるように静に吹いている。

「陛下‥お淋しいですか?」

ピダムはすこし微笑い揶揄するように低く艶のある独特な声でそう聞いた。

「……」

女王はそっぽを向き拗ねたように答えない。

「ピダム…おまえは淋しくはないのか?」

少し怒ったようにツンとして彼女はそう問いかえした。

「…淋しいです‥淋しいです陛下」

そう切なく答え、ピダムは女王の肩に手をかけこちらを向かせた。

女王は淋しいとは言わない…けれど、その頬は涙で濡れていた。

「陛下…」

そう甘く優しい声で呼び
ピダムにとって命より大切な宝物のその一筋の涙を愛しくてならぬようにそっと唇でぬぐった。


(必ずや、やりおおせます。必ずや陛下の元に帰ります。そして…)



夜明けピダムは数名の司量部の配下と共に遠雷の空のもと旅立って行った。


「陛下、ご心配ですか?」

チュンチュは向かいに座る女王に聞いた。

それには答えず女王は言った。

「‥新羅の忠臣を信じている。」

「信じておられるのですか?」

「ああ信じている、神国を守るかぎり」

(神国を守るかぎり…なるほど)

チュンチュは女王におだやかに微笑んだ。

彼女はそのチュンチュの微笑の下の雷鳴にも似た龍の静かなる咆哮には気づいてはいなかった。


ただ…

(ピダム…私を守る剣はおまえだけだ…)

女王は遠い空を思い次なる策を巡らせていた。


















続きます(たぶん)
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この記事のコメント

愛してはいけないから・・・・題名だけで泣きたくなります。

チュンチュは私もトンマンへの想いがある意味ピダムと同じくらい強いんじゃないかなと感じています。

みんなのトンマンならまだ自分一人のものにならなくても平気だけど、そして、みんなもそれを望んでいる。でもピダムだけが独占したいと考えているし、そんなピダムだからトンマンの女性の部分が揺れてしまうんでしょうね。

ではでは。
2011-09-23 Fri 21:16 | URL | ミンミン #- [内容変更]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011-09-25 Sun 02:12 | | # [内容変更]
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