新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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夜と夜のしじま


SS 愛してはいけないから

『夜と夜のしじま』


*******


ざわめきも消えて…
静寂のなかに幽かに降る雪の音…

女王は月城の奥深く一人。

宴の燭も笑い声も止み、深々と稠密なる夜が訪れる…

柔らかな白絹に白銀の流水刺繍の寝衣を纏い寝台に腰掛けている。
灯りとりの焔が揺れ仄かにその横顔を照す。
凍てつく夜の空気がその肩に降りてくる。

今宵も参らぬか…

幾つもの彼の担う責務が苛酷を極めていることも知っている。
その全ては彼女の、女王の治世を切り開く為ゆえのこと。
密貿易により莫大な利を得ようとする者共を取り締まる為このところピダムは寝る暇さえ無いほどだ。

ピダムを案じる心…
ピダムの激務さえ容認せざるおえない心…
そして我儘と知っていてもピダムを求める心…

ダメだと知っている…
求めてはいけないのだと。
王がそんな心を持ってはいけないのだと。

けれど…
彼女は寝台から立ち上がり、重い扉の前に立ち尽くす。
彼女が命じればその扉は開き、命じなければ決して開かぬ扉。

扉に手をかけコツンとちいさく打つ。

(会いたい…会いたいピダム。)

…彼女は踵を返しゆっりと扉を後にする。

涙がこぼれそうになるのさえ耐えている。

不意に夜のしじまに吹き込むように降り始めた、雪をのせる風の音が聞こえてきた。



しんしんと凍える身を切るような冷たさが染みるよで仕事に追われるピダムは夕刻近くなるまで食ひとつとらず書簡に目を通したり命令書の作成に忙しく働いていた。

「司量部令、今夜はことのほか冷えます、そろそろ…」

そうヨムジョンが上目ずかいに言う。

「…ああ、だがもう少しだ」

「あのー…特になければ私は今夜はもう‥」

ピダムは書簡から目を上げて何がいいたいのだ?というようにちらりと彼を見た。

へへ…っというような小狡い顔で

「私にも行きたいところのひとつも有りますよ」

「……」

「今夜はことのほか冷えます」

ふんっ、というようにピダムはまた書簡に目を落とした。

「別に構わない」

ヨムジョンはそそくさと姿を消した。
勿論ミセンなどとっくに姿を消している。

夜も更けようやっと執務を終えたピダムは静寂のなかに雪の音を聴いた。

(「今夜はことのほか冷えます」先ほどのヨムジョンの言葉がよみがえった…)

「確かに冷える…」

扉を開け外にでれば風に吹雪脚を早める雪…

ピダムはもう深夜という刻会えぬであろうと知りながら女王の居殿へと急いだ。
途中不意に彼は身を翻し何か思い当たったように何処かへ向かい。

しばらく後…



扉の外で何やら声えを潜ませ押し問答する気配があった。

そうして慌てる女官を背に扉を開けピダムが入って来た。


「陛下…」

「ピダム、いかがいたした?」

雪に髪や衣を濡らしたピダムが足早に近づき、彼は次のトンマンの言葉が待ちきれぬように彼女をグイと引き寄せ抱き締めた。

外に降る雪を風が音を立てて吹きつけている。

甘やかな香りのする彼女の首筋に顔を埋め

「陛下…こんな夜、好きな女なしでいられる男はおりません…」

そう囁いて耳朶から首筋へ口づけを這わす。

「ぁ…ンッ」

トンマンは強く抱かれながらも不意に清らかな花の香りに気がついた。

「ピダム…花…」

その言葉にピダムは僅かに腕の力を弛め照れたように微笑んだ。

そしてそっと自らの袖口より一輪の水仙を取り出した。

「水仙ではないか…今時期?」

「はい…」

「夜中これを?…どして…」

ピダムは女王に微かに雪の香りのする花を手渡した。

「お気に召しませんか?」

「……いやそうではない…が」

(それより一刻も早くお前に会いたかっただけ…)

「陛下にお会したかったから」

「だから、この雪の中花を?


こんどは柔らかくピダムは口づけを落とした。

「ぁ……ん」

「陛下に春をお渡ししたかったのです」

(凍える道を歩む愛しい女人に…)

「ピダム…」

(お前が居れば…私は暖かなのに、気づかないのか?)

ピダムは甘く頬に口づけた。

「泣かないでください…」

女王は我知らず流した泪を唇で受けとめられて‥

“会えた…”

その思いごとピダムに再び強く抱き締められた。

凍える夜と燃える夜の重なる一瞬のしじまの中、二人を包むように愛しい女だけを思う一輪のただ一輪だけの花の香があった…







*『夜と夜のしじま』お読み頂いきましてありがとうございます。


凍てつく夜、愛しい女人を抱き締めたい…
愛しい女人に一輪の想いを伝えたい…
そんなピダムです。



今年初のSS は静かでそれでいて熱い想いのお話です…

うさこは、こんなピダム…(笑)









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この記事のコメント

 ̄(=∵=) ̄さんへ


こんばんは~(^_^)/
読んでいて途中で息が苦しくなるほどの…
心に秘めた激しいピダムのトンマンへの
『愛』を感じて…
凄い素敵ですねぇ♪
夜の静寂の中で縺れ合う二人のすぐそばで香る『一輪の花』

貴女さえ居て下さればそれで良い…

ピダムの想いは香りと共に女王の体に染み込んでいく。

ああ、うっとりe-420



2013-01-03 Thu 23:54 | URL | テヤン #vbu/5PMA [内容変更]
テヤン様へ

こんばんは

“激情 ”……確かに ̄(* ̄∇ ̄*) ̄

>心に秘めた激しいピダムのトンマンへの 『愛』を感じて… 凄い素敵ですねぇ♪

秘めていると愛も閉じ込められ濃くなるの…(笑)

>夜の静寂の中で縺れ合う二人のすぐそばで香る『一輪の花』

>貴女さえ居て下さればそれで良い…

>ピダムの想いは香りと共に女王の体に染み込んでいく。

>ああ、うっとり

くすくす…それってテヤン様の色香に皆様がうっとり!?(笑)



「花をあげたい」それは愛する女人に春を(想いを)伝えたい真心でしょうか…

ですから…花はいらない(それより早くピダムに会いたい)ともしも女王が思ったとしても、その水仙を見ればピダムの真心がきっと解るはず(笑)
そんなことを思いながらこのSS を書いてみました。



それではまた…




2013-01-04 Fri 21:33 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #HuG4J.mM [内容変更]
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