新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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茶香梅香

SS 愛してはいけないから

『茶香梅香』

*******

葉を揺らし緑風薫る頃、梅実たわわにその木を揺らす…


ピダムの別邸にその日お忍びで訪れる女人の姿があった。


「陛下到着いたしました。」

貴族の女の乗る輿は邸の前では止まらずその中まで乗り入れたため誰もその姿を見ることはできない。

供は三人の女官と数名の護衛が付き従っているのみである。

輿の垂れ布が静かに上げられようやくトンマンは言った。

「輿はいやだと言ったのに、周りの景色があまり見られなかった」

ピダムは言う

「申し訳ございません、ただアルチョンがこうでもせぬと陛下の外出など許しません」

「アルチョンか…アルチョンは堅いんだ」

少し口をとがらせる女王の宮殿ではなかなか見せぬ口調にピダムは笑みをもらした。

トンマンの手を引いて輿から下ろし離そうとした彼女の手をそうさせぬように少しだけキツく握った。

「……」

「……」

握られた手を振りほどくでもなく少し照れてうつむくトンマンを横目で見るピダムはなんだか嬉しさを隠しきれない。

「中に参りましょう…」

「‥庭も見たい」

「…はい」

二人が邸に入ると先程からしていた爽やかな香りが不意に一段と鮮やかになった。

「ピダム、これは…茶の香りのようだが?」

「はい、茶葉は蒸し乾かしこれを拍ちそして穿ちその後炭火でさらに乾かします」

「……?」

「この私の邸では僅かな量のみですが茶葉を作っております、宮殿でお使いになる唐物のようのはまいりませぬが…」

「ほう、まるで茶邸の香りだな」

「昔、師匠が茶は気を調え毒を打ち払うと申しておりました故私もそれにならいおります」

「そうか、そうかもしれぬな…このような香しさ…」

「お気に召しましたか…?」

「ああ…」

トンマンは器の中の美しい翠色の茶を一口飲んでそう言った。

「庭をご覧になりますか?格別のものもございませぬが」

そう言ってまたピダムは女王に手を差し出した。

なんとなくきまり悪くトンマンがその手を避けようとするがピダム少し傷ついたような眸とぶつかり

「ピダム、そんな顔をするな、狡いぞ」

そう言って女王はピダムの手をとった。

「お前は離すな、離していいのは私だけだ」

「…離されるのですか?」



「……離さない」


庭へと手を繋いで歩きながら女王の少しの沈黙の後の言葉にピダムは繋いだ手にそっと口づけた。

庭では召人たちが梅の実を蔓篭に集めている。

「実梅をどうするのだ?」

「塩漬けにいたしまして梅酢を造ります、又蜂蜜に漬けたり燻したり様々に保存いたします」

「……ふぅーん」

なんだかちょっぴり拗ねた様子の彼女に

「陛下?」

「お前は物知りだな…私は梅のことも茶のことも知らない」

「陛下、陛下…梅のことも茶のことも下々のことでございます」


「………」


「陛下……梅の実を拾ってご覧になりますか?」

トンマン驚いたようにはピダムと梅の木と召人の姿を代わる代わる眺めてコクリっと頷いた。

ピダムは召人たちを下がらせて驚く女王をよそに目の前の梅の古木に登った。

「!ピダム…」

ピダムが軽く木を揺らすと緑や翠色、黄味がかってほのかに紅味をおびたたくさんの梅の実が落ちてきた。

「わぁー」

思わず女王は女王らしからぬ童女のような声を上げた。

「拾って…」

「うん」


蔓篭にたくさん集めて満足気に彼女は木の上のピダムを見上げた。

初夏の陽射しが眩しくてピダムの顔が見えない…

ピダムは実梅を持って自分に向かって微笑む愛しい女人を見つめて思う。

(おそらく他の者ならば平凡な光景、けれど自分と女王にはこの一瞬の幸せがもう一度あるだろうか…)

「…ピダミっ」

そう彼女は呼んだ。

ピダムは羽でもあるかのようにヒラリと木から降り立った。

そして彼は翼を広げるようにトンマンを包んだ。

頬を寄せたトンマンからはなんともいえぬ梅果の瑞々しい香りが、ピダムの衣からは焚き染められたような初茶の香りがしている…

「陛下、茶花も梅花もまた御覧にいれとうございます」

「ああ」


(次の季節も、又次の季節も同じ時の中にいよう…ピダム)



その瞬間に薫る、甘く清しい香りにこそ互いへの伝えきれぬつのる思いを託す二人であった…









*『茶香梅香』(さこうばいか)お読み頂きましてありがとうございます。


茶葉の香り、梅の実の香り、とても素朴で里山の景色に合う、又茶の香り、梅花の香りはどちらも高貴で気高くもある気がしてこのお話を書きました。

お茶のことは時代はもう少し下った唐時代の茶経に基づいています。
ピダムがこっそりお茶作り!?(笑)の巻&トンマン梅の実拾いの巻きです(笑)


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この記事のコメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013-08-23 Fri 11:55 | | # [内容変更]
T様へ

こんにちはー♪

>男女の関係って…

まあそうかもしれませんねー
でも波もあるようにおもいますが…

>確かに結婚生活も新鮮さは最初だけで…

うーん…
そうなのかなぁ…?



歴史のなかの英雄たちの人生は非凡だからきっと恋も平凡では有り得ないかもしれないですね…

>ピダムの一途な愛、激しい恋慕に包まれてるトンマンが羨ましい限りで す(*^o^*)

そうですね…
本当に昔の女王って大変そう。
駆け引きとか心を渡さないとか。
疲れそう…(笑)

英雄にも凡人にも、人生昼もあれば夜もある…ね←なんのこっちゃ…(笑)
きっと凡人 ̄(=∵=) ̄でもきっと新鮮にできるはず!?

でもきっと凡人も英雄も人生全て過ぎてしまえば何ほどのことでもない気もします。


コメントありがとうございました。
ぺこりん


まだ人生途中の ̄(=∵=) ̄より





2013-08-24 Sat 16:55 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #HuG4J.mM [内容変更]
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