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新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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山笑ふ

SS 愛してはいけないから

『山笑ふ』

*******

春、山々は眠りから覚め木々は芽吹き瞬く間に辺りを若緑に染める、そしてもう一度瞬きしてみれば白く房揺れる玉桜とたなびく霞のように匂う躑躅の群生。



「陛下、あの山がその昔天人が舞い降り新羅の美しさを箜篌を奏でて祝福した言い伝えのある嶺にございます。」

「ふぅん…ピダムは存外物知りだな」

まぜかえすように笑い丸い愛らしい眸で女王はピダムを見つめた。

「これから向かう麓にあるのがその天人が湯あみしたという出で湯でございます」

「我と同じく宮殿ばかりにいるのにさすがは司量部令はなんでも知っているな、もしや誰かと参ったことでもあるのか?」

またもや女王はピダムをからかう、ピダムが女王のもとを離れ出で湯なぞにいくはずもないましてや誰かとなぞあろうはずもない、そうたかをくくっての物言いだ。

「………」

「‥ピダム?」

「以前一度参ったことがございます」

「!……」

(…いつ、誰と…)

女王は思いもかけないピダムの言葉に思考を封じられた様になり問いただす間を逸してしまった。

「………。」

「陛下?」

「………。」

「いかがなさいましたか?」

「いや、なんだか‥疲れた」

ピダムはその言葉を聞き心配げに眉を寄せ

「もうしばらくで到着いたしますればしばらくのご辛抱を」

「…ああ、すこし目を閉じていよう」

彼女は輿の垂れ絹を下ろし馬を並歩させるピダムにそう言った。

ピダムは輿を見つめ女王の体調を気遣うように従者にゆっくり進むように合図を送った。



その天人の湯を引き込んだ湯殿のある邸はソラボルよりやや離れた場所にある。元はとある地方貴族のものであったが今はピダムが所有している、といってもピダムは特にこの邸に興味を持ってはいなかったがいつかの雪の夜二人で湯に入ったことを思いだし女王に遊山がてら行ってみるのにちょうどいい天人の湯の話しをしたら僅かに頬を染めてそのように珍しい湯なら一度眺めてみたいとの言葉をなんとか彼女に貰い、急ぎその邸を女王の行幸の場に相応しく手を加えけして華美ではないが格式を整えたものとした。

「陛下、到着致しました」

輿がゆっくりと下ろされた。

ピダムは膝まずきそしてゆっくり立ち上がり女王が輿から降りるために手を差しのべたが、彼女はその手をとらず

「皆もしばし休むがよい」

そう言い邸へ入った。

「陛下、まだご気分がすぐれませんぬか?」

「………」

(気分?お前がそれを聞くのか?)

「ただ疲れただけだ…」

「さようにございますか」

(途中までは道中もお楽しみになっておられるようであったが…)

「それではお茶を召し上がって…」

「暫く一人になりたい」

ピダムの言葉を遮るように女王が言った。

(陛下はお疲れなのか?それとも…とくにご不興になることがあったようには思えないが…)

そうピダムは思いながら何も言わず頭を垂れ室を出ていった。



(ピダムがここへ誰と来ようがいいではないか…

別に、考えてみればピダムとて妻なり妾なり何人かいたとしても不思議はない…でも…

女王の私とこうなっているからお前が表立て婚を結ばぬ事はわかっている。

他の貴族逹がお前と婚を通じその勢力と結びたがって‥いるその娘主を使った攻撃をお前がかわすのに手をやいていることも…わかってはいるのだ。
だから、もしお前がどこぞの女に目をかけようともおうように構えておるのが王だ、だってお前は臣の一人で在るべきだからそうでなくてはならぬから…。

………だけど。)

そこまで考えて彼女はまた思う。

(いずれお前を離してやらなければ、そうしなければ…
私は自分の婚さえ時に新羅の為に使だろう。
だからお前を離さなければ…お前のことを利用するだけ利用しているのは私なのだから…でもお前が誰かとここへ来た私がしらない間に…
その事をなんでもないことのようにそんな風に、演技さえできない)

「陛下、ピダム公がお庭にお出ましになりませんか、と仰せにございますがいかがお返事申し上げましょうか」

「ピダムは?」

「公はお庭の方に居られますが、御呼びになられますか」

「…いや、いい。」

「お出ましになられますか」

「行かぬ。」

暫くして

「陛下、ピダム公がいたく心配なされておいでですが、お会いになられますか?」

「………」

女官から女王の様子を聞きピダムは何事かは解らぬが何か自分が女王の不興をかったのだと感じたが思いあたるふしがない。

せっかくの遠出が…
ピダムは困り果てた。
彼は女官に申し付け庭が一望出来る風通しのよい場所へお連れするようにと。



春の柔らかな風が名も知れぬ花の香りを運んで吹きすぎて行く…
美しい景色を目の前に女王は一人椅子に座っていた。
早緑に薄紅の薔薇刺繍の衣の裾が見え隠れしている。

ピダムはなんだか寂しそうにも拗ねたようにも見える女王の後ろ姿をしばらく見つめていた。

「陛下…」

声をかけたが、聞こえているはずなのに応えはない。
女王の背中がなんだかいやいやをしているように見える…

「ピダムを避けていらっしゃるのですか?」

ピダムは困ってそっと後ろから目隠しするようにして聞いた。
ピダムは瞬間驚いた、目隠しした手に涙が…

(!お泣きになっていた…)

ピダムは手を外し急ぎ彼女を見ようとしたが、女王の手がそっと目隠ししたピダムの手に重なった。

「陛下?」

「…見るでない」

「……陛下いかがなされたのですか」

「………」

「陛下」

「お前が…誰かと来た湯などいやだ、そんな…嫉妬なぞする私はもっと嫌なのだ…」

「!陛下」

「………」

「違います!師匠です。師匠と昔参ったのです。」

ピダムは思いもかけない誤解に驚き慌てた。

(それでご不興であったか)


「………国仙と…」

「はい」

「ここに来たのはムンノ公と?」

「はい」

ピダムの手に重なった手がゆっくり外れた…
ピダムは回り込み彼女の涙を優しく拭き膝をついて女王を見つめた。
彼女は少し恥ずかしげにそっぽを向きながらピダムに手を握られるままになっている。

「陛下、ピダムは陛下以外誰も、何も望みませぬ」

「…ああ」

「お信じ下さいますか」

「…うん」

「ピダムの望みは叶いましょうや?」

「ピダム…」

女王の答えを二人の唇の間に綴じ込めるようにピダムは彼女の頬を両手で挟みそっと引き寄せた…。


揺れたとしてもまたきっと信じあう、その手の温もりがいつも彼女を守るから…


そして、山は春の香りに萌え息吹く…








*こんばんは、皆様いつもお読み頂きましてありがとうございます。

今回は春の二人、ちょっぴりトンマン嫉妬するの巻きです。(笑)
好きだから時に哀しくなることもあります。
春の山々は静かにそんな二人を見つめていますそんなお話です。



(2月5日600拍手御礼)

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この記事のコメント

うさこ 様 こんばんは!

「誰かと来た」と聞いて、即「女」を思い浮かべるとは、陛下が可愛いです(笑)。

いいなあ。私も美しい景色を眺めながら、露天風呂(ですよね?)にゆっくりつかりたいです(ひとりでいいので)。

P.S. 「うつほ草紙」はいかがでしたか?



2012-02-08 Wed 20:31 | URL | midorin #- [内容変更]
うさこ様こんばんはです(*^_^*)

>「ふぅん…ピダムは存外物知りだな」

この時のピダムの嬉しそう(であろう)顔を妄想してしましました。

テレビを見ていて、もっともっとピダムをほめたげてー(笑)と叫んでいる私を思い出しました(笑)

露天風呂・・・・私ものんびりつかりたいです。

2012-02-08 Wed 22:05 | URL | ミン #- [内容変更]
midorin様へ

こんばんは
今日も ̄(=∵=) ̄のところは雪が降りました。



>「誰かと来た」と聞いて、即「女」を思い浮かべると は、陛下が可愛いです(笑)。

トンマンの嫉妬をもっと書きたかったのですが…うーん、本当にピがちょっとでも浮気心をおこしたらトンの怒りっぷりはどうなるんでしょう…怖いです。
でも今回は春の山々にあうくらいの嫉妬かなぁ~っと(笑)

>いいなあ。私も美しい景色を眺めながら、露天風呂(で すよね?)にゆっくりつかりたいです(ひとりでいいの で)。

 ̄(=∵=) ̄の妄想ではこの邸のお風呂は野趣あふれる美しい設えになっています。
きっと美しい女人が一人湯けむりの向こうに居るというのも絵になるかもしれませんね。


>P.S. 「うつほ草紙」はいかがでしたか?

うさこはこの「うつほ草紙」を読んでみて一対ということについて考えました琴(琵琶)の一対、己の魂魄の一対、愛しあう二人という一対というように、それはどういうことなのかな…と出会ったと思っても別れる、物も人も生は瞬きする一瞬の間のようなものそのなかでそれを繰り返すのは何故なのかな…と。
その意味も答えも解りませんが。
この原作の「うつほ物語」はなんとなく知っていた程度でしたので改めてそれをこういうふうに描かれた諏訪さんの力は凄いなと思います。

うさこは古の楽器やその音色のことを考えてるのが好きです、なので時々そういうものをお話に登場?させてしまいます、今回も天人の調べとして箜篌はどうかな…と思いつかってみました。
壁画の中や物語の中の古の調べを聴いてみたいですよね…。

それではまた…




2012-02-09 Thu 21:10 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #- [内容変更]
ミン様へ

こんばんは

今日も寒かったです。



>テレビを見ていて、もっともっとピダムをほめたげてー (笑)と叫んでいる私を思い出しました(笑)

 ̄(=∵=) ̄もピダムのほめられた時の嬉しそうな顔は好きです(笑)


>露天風呂・・・・私ものんびりつかりたいです。

 ̄(=∵=) ̄は一度登別で露天風呂に入ったら髪の毛が凍って白くパリパリになってびっくりした思い出があります(笑)
でも今回は春のいで湯なのでそんな心配はないですが。
ピダムはかなり財を投じて設えたと思うのでなかなかの春の湯だと思います。
 ̄(=∵=) ̄も入ってみたいです(笑)

お風呂でのんびりも好きですがいっぱいお金と時間があれば“綺麗なもの探求”とか銘うってあちこち旅をしてみたいです。夢~♪(笑)

それではまた…





2012-02-09 Thu 21:25 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #- [内容変更]
うさこ様 おはようございます。

私もすっかり春の山になって微笑ましい二人を見つめてしまいました。

私はピダムを好きになってまだ日が浅いのですが、ピダムというとやはり花郎のときがいちばん、前髪のないピダムはあんまり・・・などと思い込んでしまっていたひとりでした。けれど、うさこ様のしっとりとした大人な雰囲気のピダムにはすごくドキドキするのです。恋だなぁと感じています。たぶん、これからもっともっと好きになってしまいそうな予感がします。

先日は、うさこ様の文章について失礼に聞こえてしまったかもしれませんが、あれはあくまでも私の問題なのです。ちょっとした持病があり、あまり書物に触れてこなかったので読むことに慣れていないだけなんです。こちらこそ謝らせてしまってすみませんでした。私は、うさこ様の世界が大好きなんです、本当に。
2012-02-11 Sat 10:25 | URL | ハルカ #HX7bbD3I [内容変更]
ハルカ様へ

こんばんは



山笑ふ、山滴る…四季様々に変化する山々ですが山は動かず人の生を見守っているように思います。

“前髪のピダム”いいですね。
前髪のピダムならうさこはミシルの矢からソヨプトで逃れピダムが助けにきたあの時の彼の感じが好きです、衣込みで。(笑)

>けれど、うさこ様のしっとりとした大人 な雰囲気のピダムにはすごくドキドキするの です。恋だなぁと感じています。

うさこの世界のピがトンに隠れてこっそりニコニコしそうです。

>たぶん、こ れからもっともっと好きになってしまいそう な予感がします。

ありがとうございます。

>先日は、うさこ様の文章について失礼に聞こ えてしまったかもしれませんが…

いえとんでもない(にこっ)
うさ流な書き方なので、本当はこう読んで頂けたら…と思う漢字も多々あります(笑)でもきりがないのでどうしてものところだけ最近、末尾に*印で読みを書かせて頂いています。

うさこはこうしてコメントを頂くとあー本当にうさの書くものを読んでくださる方がいらっしゃるんだ、とその方の存在を感じられてすごく嬉しくなります。
ハルカ様はじめ皆様にとても感謝しております。(ぺこん)

構想無し、考察無し、資料無し(←えー!!)な妄想力だけの ̄(=∵=) ̄の世界ですがうさ自身楽しいのでそれでもいいのかな~と最近思っています。(あはっ←いいわけないすが…)(笑)

という感じのブログです。(ぺこりん)

それではまた…



2012-02-11 Sat 20:43 | URL | うさこ ̄(=∵=) ̄ #- [内容変更]
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