新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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花香…1


SS 愛してはいけないから(番外編…現代)


『花香』…1



*******

人は、どこか懐かしく切なくそれでいて胸が高鳴るような…そんな出来事が今のそのすぐ先に待っているとも知らずにいる。

そして、ある日不意にそれは訪れる。


インミョンは大学の研究室で歴史学の研究を続けている、この日も古書店を一人特に探し物があるわけではなかったが訪れたその店で思わぬ相手と出会った。

「もっと古くて時代のついた物はありませんか?」

「古いといってもいろいろですが…」

主人は値踏みするように彼女を見た。

「お金はあります。」

制限なしのカードを見せた。

「これはこれは…」

一変に店の主人の態度が変わった。

「時代は様々ですが確かな品ばかり扱っておりますとう古書店でもめったな方にお見せしておらぬ品がございます、よかったらご案内いたします」

「………」

「あ、そうそう珍しく今日はお客様と同じような方がもうひと方いらっしゃっています」

そう言いながら店主は店の奥へと彼女を案内した。

(滅多な方には見せぬといいながら先客なんて、へん!)
と少しばかり意地悪くおもいながらも先ずはその確かな品とやらを見てみようとインミョン思った。


角を曲がった処にあるその部屋の扉は他の扉に比べひどく古めいて見えた。
店主は扉を開けながらうっすらと笑い

「もうひと方はお客様もきっとご存じの方です…品は沢山ございます、後で参ります、どうぞごゆっくり」

そう言った。

確かに見回したその部屋には歴史学者垂涎ものの幻のタイトルが書かれた背表紙のものや古代文字の綴じ本など小さな古書店にしては驚くほどの品ばかりであった。


そして彼女が並んでいる本に気をとられていたその時、カタンッと音がして書棚に寄りかかっていたすらりと背の高い男がこちらを見た。

インミョンは少し驚いた、それは彼がモデルで最近はCM やドラマにも出始めているヒョンジョンだったからだ。

インミョンはそっち方面には疎い方だがそれでも彼のことはTV などに出ているのでその存在は知っていたのだ。

「君はだれ?」

不意にヒョンジョンが話しかけてきた。

「お客よ」

急に話しかけられインミョンは驚いたはずみで少し高飛車にそう答えた。

「あはは…違いないだけど名を訊いたんだ」

屈託なく本を手にしたまま彼は近寄ってきた。
背のたかいインミョンより頭ひとつは十分高い彼はかなりの長身だ。
眼差しが優しいその眸の中には隠しきれない驚きと少しいたずらっぽいと言ってもいいのかもしれない煌めきがあった。
だから答える必要は無いと思いながらも何故だか

「インミョンよ、あなたは知ってるヒョンジョンでしょ」

そう応えていた。
一瞬何か考えるように彼女を見つめた彼は

「僕を知ってるんだ」

そう言ってとたんに嬉しそうな笑顔になる。

(なに?TV なんかとなんだか印象が違う人ね…)

「インミョン、インミョン…そう…ねえところで此処へは探し物?」

(すごく綺麗だ…綺麗だ)

ヒョンジョンはその思いを覚られぬようそう言った。

「いえ…ただ気になったの、なんだかこの店が。古い本は好き‥だから…でも何故?あなたは何か探しにきたの?」

「いや………僕は見つけたよ」

「………?」

「見つけたと思う」

「これなんだ」

そう言ってかなり古いものらしい一冊の本を彼女に見せた。
そしてヒョンジョンに見つめられたままインミョンはそれを手にとり不思議ことにその題に引き寄せられるようにページをめくっていた。





―― 花香 ――

その古い綴じ本の表紙にはそう記されていた。




陶然とするような香りに満たされた満開の梅林。
濃き薄き様々な紅と真白な梅の古木が咲き誇っている風雅な趣のある屋敷の辺り…

近頃この辺りで女人に声をかけた男のがその大層美しいし女人にに導かれた屋敷でもてなされたとか、そうかと思えばすらりと様子のよい男人に声をかけられた女もまた大層な屋敷で心地よい思いをしたとか…そんなちょっと怪しげでなかなか魅力的な噂話がソラボルの市井で囁かれ始め風にのるようにその話しは真しやかに宮殿内に出入りする貴族たちの間でも流れ始めていた。

「で、その風雅な趣のある屋敷とはいったい誰の邸なのだ?」

「さぁ…噂話ですから」

「だがお前がただの噂話を私に話しに来るほど暇だとは思わぬからなにかあるのだろう?」

「……ええ…その噂話善からぬ後日談がございまして、その大層美しいし女人とか様子のよい男人に会った者たちはその後暫くしてことごとく大切なものを一つを無くすそうにございます」

「…無くすとはどういうことだ!?差し出すということかそれとも盗まれるのか!?」

「…それが無くすものは様々で金子を無くす者めとったばかりの妻に去られるもの一粒種の愛し子が消えるなど、しかしどれもこれも暫くすると戻って来るそうにございますが金子は家に投げ込まれていたり妻や子にいたってはその間の記憶が定かでないとか…」

「……それは確かに誰かの悪戯にしては行きすぎだが悪行というには違う気もするな」

「はい…しかもこれらのめにあったのは市井の者達ばかりでなく貴族の中にも噂が広がっているということは…」

「!貴族の中にもそのようなめにあった者がおるのだな」

「そのように聞き及びます」

「…………」

ピダムはトンマンの瞳の中に困ったことだとその話を危ぶむ色と同時に楽しみを見つけたワクワクした光が一瞬見えたのを見逃さなかった。

(俺ちょっとまずかったか…公主様は頭は良いけど大人しいってわけじゃないからな、大人しいっていうよりむしろその逆、真逆!!)

(民が騙され踊らされているだけでなく貴族までとは大胆な然し目的は何だろう…)

「ピダム、これは捨ておけぬな」

「え!ですがいや‥、そうだ先ずは俺が調べます」

(そらきた!)
そうピダムは思った。

「いやこれはそなただけにまかせてはおけぬ」

「ですが…」

「拐かしめいているではないか!」

「いやですから私が…」

「ピダム一緒にことの真相を探るぞ!」

と“一緒に”を意図的にトンマンは言いピダムは一緒にの威力に負けて

「はい」

と応えて仕舞った!!と思た。
だが時すでに遅し、頷きながら近頃どうしてもトンマンに対する自分のざわめく心をもて余し気味の思いに自分で拍車をかけてしまったことに気づいた。

けれど彼は知らない“一緒に”でピダムの心を捕らえたトンマンが心で可愛い満足な笑みをもらしていたことを…


そしてピダムはトンマンの梅花の香りのするような凛とした微笑みにただ胸を高鳴らせていた。







続きます








*今回はリクエスト作品ではないのでごめんなさい。

ちょっとなんだかこんなお話しが浮かんだもので…つい。


ぺこりん
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瑠璃揚翅

今回はhakumi様よりいただきましたリクエストで、リクエストSS 第三弾となっております。




SS 愛してはいけないから


『瑠璃揚翅』


*******


“陛下…”

ピダムは胡風の扇でゆっくりと風を送りながら柔らかく透ける生地の薄紅と翠を水に滴一筆混ぜたような夏の寝衣で横たわり眠る女王を見ていた。

このところの暑さのせいか政務の疲れか夜の眠りも浅く食も細くなっていた、とアルチョンは言っていた…

ピダムは玄菟城から帰還したばかりであったがとるものもとりあえずりやっとのこと訪れてみれば

「ピダム…来たか」

と微笑んで倒れこんだのだ
その時周りの者も驚く早さで戸口にいた彼が走りよりその腕に抱き止めた。

彼はその時腕に抱き止めた身体が驚くほど軽かったことを思い胸を突かれるような思いがした。
ピダムは指を彼女の細い指に絡め、もう一方の手で眠る女王の額にかかる髪にそっと触れた。



それは一月ほど前のことであった…

「陛下この度の急な唐からの使者の出迎え司量部にやらせてみてはいかがでしょう」


女王の執務室彼女のはす向かいに座り甥のチュンチュが言う。

「…しかし多国とのそういったやりとりは司量部の責務ではないが?」

「はい、ですが司量部にはミセン公というその道の達人がおります」

(…そ、その道の達人‥つまり接待の達人!?)

「そのまさかです」

「ではミセン公に出迎え役を?」

「いいえ、残念ながら以前ならいざ知らず今はピダム公の配下、ですからピダム公が適任と思われます。」

「………」

「このさいピダム公にもいろいろ経験させるべきでは?急とはいえミセン公もついていることですし」

「…わかったチュンチュの推薦ということか?」

笑いながらトンマンは言う。

「陛下、陛下は誤解しておいでです私は政に私利私怨は持ち込みませぬむしろ司量部令の才は高く評価いたしております」

トンマンは今度は笑いもせずじっとチュンチュを見つめた。

「なるほどこのお役目そなたからの司量部令への就任の餞ということか」

「そうですね餞というには些か遅すぎたかもしれませんがなにしろ陛下直属の部の長ですから後れ馳せながらこの度のお役目をと考えます」

「なるほど…」

(成功すればこの新羅にとって大きな益になり失敗すればピダムの失脚に繋がる…か)

「そこまでチュンチュが言うならこの度のことピダムにまかせることにしょう」

チュンチュは穏やかに頷くように微笑んだ。

(陛下、私の目的がピダムの失脚などではありませぬ、勿論それも望まぬとは申しませぬが‥さぁピダム、お前はどうする?)



ピダムは役目を果たす為一路玄菟城へ向かっていた。

「ピダム公この度の唐の使者は皇帝の縁者というではありませんか、またおおくの貢物を要求されるのでは?」

「そうだろうな、だがそれを避け唐の支援を取り付けねばならぬ…」

(もしくは情報を手にいれねば)

「もうすぐ玄菟城です本当にミセン公にお出でいただなかくてよろしかったので、なんならいまからでも配下の者をやりますが」

「…必要ない、解らぬのか陛下はこのピダムにお命じになったのだ」

(このお役目、チュンチュのヤツの企みでも受けて立てと思われてのことだ!)

「………」

「やりおおせ新羅に益をもたらすのだ」

「女王直属の地位や今後の司量部の扱いもかかってますね」

ヨムジョンは馬の手綱を締めながら気負いこんで言った。



城は儀礼的になりすぎぬよう城の設えはミセンとの入念な打ち合わせどうりピダムの指示で腕のたつ商人でもあるヨムジョンが吟味し調えられた。

使者の迎えの準備も整った頃ヨムジョンが慌てたようにピダムの元へ走ってきた。

「た、大変でございますピダム公、使者殿がご病気で変更になり代わりの方がお越しになるそうにございます」

「……何故今頃」

「恐らく唐側がこのこと伏せていたものと思われますが」

「…で、誰が使者か」

「そ、それが翁主様の皇帝の翁主のお産みになった姫であれれるとか…皇帝はその翁主、彼方では公主様とお呼なされるそうにございますがそのて姫様のお母君を大層愛されこのお使者の小公主様への慈しみもひとかたならぬものがあるそうにございます。」

「…なぜまたそのようなお方がここへ…」

「さあそれは分かりませぬが…」


そして、表れたのは優美でしっとりとした姿、どこか遠い異国の血の混じった細身の妙齢の美女であった。
ヨムジョンなどはその気品ある美しさに見とれ涎を垂らすというよりは目を白黒くちは暫くの間、呆けたように開いていた。
ピダムは美女を目の前にしてもまったくどうずることなく儀礼に乗っ取った挨拶を驚くほど巧みにやりおおせた。

小公主はピダムを眺め言った。

「ピダム公、今回はなかなか面白い趣向でございますね」


「?お気に召されましたか」

「ええ、とても」

綺羅綺羅と金細工の装飾具が揺れ、かろやかな笑い声が玄菟城を華やかなものにしていた。
姫君の名ははリォウリー小公主、長い黒髪にぬけるような白い肌そして眸の色は祖母や母と同じ青く深いその名の通り瑠璃の色。

「この庭園の曲水は…」

「そのことではございませぬ」

優雅に手をピダムに差し出しながら小公主は言う。

「チュンチュ様からこの度のことお聞きおよびでしょう、それとも陛下から?」

「……」

ピダムはリォウリーの眸を見つめて次の言葉を待った。

「チュンチュ様とは姉と弟のように唐では親しくさせて頂いておりましたの」

「そうでしたか、チュンチュ公は唐でお育ちでした、しかしそれと今回の当国へのご訪問…チュンチュ公のお出ましをお望みでしたのならとんだ御無礼をいたしました。」

「ピダム様それは違います私ね、チュンチュ様から頂く書状の中のピダム公に聊か興味がありましたの…使者はそのついで、ご存知ありませんでしたの?…これはお見合い」

リォウリー小公主は大国の姫の何事も通らぬ思いなどないかのような奔放な態度とピダムの驚いた視線を前にどこか気恥ずかしげにする可愛気な様子が魅力的であった。
少なくともピダム以外の者はそう感じたのであった。




「陛下…先刻ヨムジョンより知らせがまいりました…」

女王の執務室に入るなり開口一番ミセンが切り出した。

女王は静かに

「いましがた私もチュンチュ公から聞き及んだばかりです…が、もう今頃はもう入城されておる頃であろう」

「ピダム公は」

「ピダム公はご存知ないでしょうな、我々も今しがた知ったばかり使者の変更も唐の皇帝のご意志も…」

チュンチュはミセンに楽しげに言いそのまま視線を女王に向けた。

「小公主様はピダム公をお気に召しますか否か…何れにしても思し召しがあればピダム公がお相手いたすでしょう、何しろ姫は私と気の合う自由な方です」

「ピ、ピダム公を!?思し召し!」

ミセンは驚き言った。

「別に問題ないでしょう、ピダム公は独身ですし確かに小公主様のお相手には身分差があるかもしれませんが姫様の婿は姫自身がお探しになりたいのだとか幼い頃より私にそう申されておいででしたから…ピダム公への司量部令就任の祝いとしても結果、悪くない。勿論ピダム公は頭が切れますみすみす美しい唐の姫とその姫を得ての恩恵を逃しはしますまい」

「…美しい姫なのですか」

ミセンがミセンらしく言う。

「そうですね…大層美しい方です、男なら先ずもって心穏やかにはいられぬほど」

「おお…それは…」

だが女王の眸に気づきミセンは慌てて口をつぐみチュンチュは

「楽しみですね、陛下…ピダム公の外交手腕が…」

などとチュンチュは笑い、その笑いの裏の暗い思いを女王にわざと悟らせた。

トンマンは波立つ己の心を見つめてなお平静な態度を保ちながらチュンチュを見た。

(なるほど…ピダムに唐の姫とはチュンチュらしい企み…)

「………ピダムを信じています」

「信じておられる?」

「ええ」

「ピダム公は手段を選ばぬ男きっと新羅に益をもたらしましょう」

「ピダムは新羅に誠をつくします」

「新羅に?…そうですねピダムは忠臣ですさぞ励むことでしょう、ねぇミセン公」

「は、はい、いえ…」

さすがのミセンもこのチュンチュの毒にへどもどした。



それからリォウリー小公主は特に公式な交渉などもちださずピダムと一緒に城の周りを散策したり互いに曲を奏あったりある日には姫の所望により剣舞を披露したり…
朝から深夜時には夜更けまで共に過ごした。
まるで国の利益など知らぬげに…



だが…小公主は踏み込めぬいや踏み込んできてくれぬ相手…に日増しに惹かれてゆく自分に驚きと不思議な不安と期待を感じて、いた。

そして、ある夜…


「ピダム様はあまり御酒を御上がりになりませんね、お嫌い」

「いえ…嫌いではありませんが、特に好むところといたしておらぬだけにございます」

「…そぅ、いけませんね」

「いけませんか?」

「ええ…」

「何故でしょう?」

「殿方は女に口実を与える余裕がなくては…」

「酒を飲むとそうなりますか?」

「ええ、たぶん」

「ならばこのピダム小公主様の前で酒はのめませぬな、これ以上大国の姫君に親しく接しましてはいささか無礼がすぎましょうから」

「まぁ…」

(その無礼を私が待っているとしても?)

(何を考えてお出でやら…交渉の場を作らぬつもりか!?、いったい何故…見合いなどとは馬鹿馬鹿しい)

「私、ピダム公が気に入りました。新羅の女王様もこの度のこと望んでおられましょう?新羅にとってよきことですもの」

(こうまで私に申させて否やはありますまい…)

ピダムは“新羅の女王様もこの度のこと望んでおられましょう?”の姫の言葉に片眉を上げ、次の瞬間さっと衣の裾を払い片膝をついて言った。

「姫君に申し上げます…私は神国の女王のみただ御一人に仕える臣でございます。リォウリー様に仕えることは叶いませぬ尊い血の姫、私の願いをお聞きとどけください…ピダムの命は今までもこれからも女王のみに捧げとうございます‥どうぞお許しください。」

「……そうかピダム公は酔えぬか…」

(唐の使者で皇帝の孫の私をそう扱わぬ…悔しいような‥憎らしいような)

「不調法者にございます」

「…ならばそなたのめに茶を立てましょう」

(心が欲しいと‥ピダム様を想うリュウォーリーの心をせめてお分かりください)

茶器は黄色の陶製、絵付けは珊瑚色の蘭花…
中は濃い翡翠色の芳香深き一服の茶。
リュウォーリーの玉の指環を嵌めた指が器を渡す時ピダムの手に触れた…

「このピダムこのように清んだ香りの茶を初めて飲んだ心地がいたしました。」


「そうですか…なれどピダム公は正直なお方」

「………」

「この茶さえ愛しい方に飲ませたいと思われた?いかが?」

(茶を飲む一時でさえそなたの心を女王は離さぬか…)

「…姫君はやはり慧眼でございます、茶は冷えた身体を暖め熱をもてば冷まし、心沈めば慰め心逸りすぎれば穏やかに…このピダムもそのようでありたいと願います」

「“そのようでありたい”なるほど慧眼か…ならば慧眼とはつまらぬな」

(……心を見とうなかったそなたが愛しく誰かを想う様など…)

わざと拗ねたように言ってリォウリーは笑いその言葉の奥の本心をそっと胸にしまった。

「ピダム公、夏の夜は火照りを冷ます風が心地よいな…明日は唐へ向けて立つと致します。私‥せめてチュンチュ様を悔しがらせましょうね…この度のこと首尾よく運んだと女王にお伝えなされ」

そう言って微かに笑いながら立ち上がり姫は扉を出ていった。

その時姫の思わぬほど深い思いをピダムは知った…

夜明け前の秘めた青、その青のごとく深く静寂の瑠璃の翅がピダムには一瞬去りゆく姫への背に見えた気がした…



翌朝姫君の一行は旅立ち、ピダムの手には香り高き茶葉の入った手のひらに乗る磁器の茶筒、そして添えられていた一巻の書状。

そこにはこの度のもてなしの礼と新羅の美しさが流麗な字で記されており唐より礼として茶葉の貿易の申し出が記されていた。

ピダムは静かに書状を閉じた。

そして茶筒の小公主の紋章“瑠璃揚翅”だけがピダムの掌の中に残った。




夏の翠の風がそよぐように吹き、ピダムの想いは月城の主の元へ向かっていた。

(陛下、お会いしとうございます)



繋いだ指先が微かに動き女王の眸がゆっくりと開いた。


「ピ ダ ム」

唇が動く。
自分を呼ぶ声を奪うように彼はトンマンに口づけた。

彼女は口づけを受けとめて言う。

「唐の揚翅はいかがした?」

「ピダムは花や蝶に興味はありませぬ」

「……」

「花や蝶ではそなたには役不足か…」

寝台から起き上がるのを助けようとしたピダムを手で制して弱っていながらも気丈にトンマンはふるまおうとする。


ピダムはその細い指をそっと握り

「ピダムが求めるは地上の星のみにございます」

その言葉を聴き

「お前の望みはおおきいな…」


「いけませぬか…?」




「いや…悪くない」


そして熱を秘めた二人を包み空が青から瑠璃へそして夏星の煌めく群青へと変わっていく…



























*『瑠璃揚翅』お読み頂きましてありがとうございます。



頂きましたリクエストは“チュンチュの企み で唐の姫を連れて きてピダムとの政 略結婚を進める話” とのことでしたので…こういったお話しを考えてみました。

妖艶でも可憐でもない、いやそのどちらでもあるような高貴で清い感じの女人をイメージしてみました。


お楽しみ頂けましたら幸いです。

hakumi 様皆様ありがとうございました。



☆他に頂きました皆様からのリクエストも幾つか並行して書いております出来上がり次第公開させて頂きたいと思います。ぺこりん
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