新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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雪の果て

SS 愛だと知らず

『雪の果て』


*****


陽はゆっくりとその姿を現す時を伸ばし、けれど一度夜が訪れればまだ確かに冬の中にいるのだとその寒さが躰に感じさせる。

そんな闇を淡く凍らせる透き通るような降る雪に冷え込む夜。



トンマンは物語りを読み終えて飾り文字で美しく装飾されたその皮の表紙を閉じた。

細い指先がその文字を辿る…

ソファの入れた蒸して発酵した茶葉と山羊の乳の温かな香りが部屋中に広がっている。
その香りは砂漠を思いださせ、まるでいつかカターンおじさんが話してくれた宝石のような眸の人々の街、石の道はどこまでも続きその道を車輪を響かせ駆け抜ける戦車、橄欖樹の木々を渡り果物の林を抜ける海風…
皇帝はいるがそれは人々が選ぶ皇帝だという…“羅馬”

そして羅馬はそこから、どんな国にへもいけるのだと言う本当にそんなことがことがあるのだろうか?本当にそんなところがあるのだろうか…

あのときカターンおじさんの手をとり駱駝に乗れば其処へ行けたのだろうか…

そんなもしもが不意にトンマンの胸を幻の夢を求めるように高鳴らせる。

けれど彼女はその思いを鎮めるようにまた考える。



いや…
あの時、羅馬ではなくこの新羅を目指した。
どういう理由であれ…


そして私は今ここにいる。


剣を取り民をこの手で罰してまで秩序を守る。与えることは甘やかすことではない、むしろきっと与えられているということは苦しいことかもしれない…与えられているものが大きければ大きいほど…

搾取されるだけの一生からは開放してやりたい…甘くはない、楽ではないがけっして奪われない暮らし‥それを得る為には


“希望を与え夢を与える”


それが新羅を、民を強くする。

そしてそれは新羅がとるべき三韓一統への道だ。


それをなし得る為に今、私が目指すは女王になること王妃や副君などでは駄目だ王でなければそれはなし得ない。

羅馬を夢みることそれはしてはならない…

私の夢は希望は民と一つでなければならない。



生まれた時私は確かにこの国の公主であった。
がしかし捨てられ…私は砂漠でなにも知らず自由であった。
生まれたとき運命が決まったとは思わない…
もし運命があるとするならあの砂漠で新羅へ続く道を選んだこと。

こうしてここにいる。
その為に出会い別れた人たち…

大好きなかあさん、遠い世界を教えてくれたカターンおじさん、そして私を捨て私を認めた王様王妃様、頼りになってどこか憎めないチュクパン兄貴。

一緒にここを出ようと言ってくれたユシン郎。

度胸があって人でないような剣の腕何かを探し求めているかのようなピダム。

私の行く手を阻むミシル…そして姉上、私の幸せの為に命を落としたたった一人の姉さん。


出会いを思い別れを思いトンマンはその夜冷たい雪の上に眠るように静かに寝台に身を横たえた。


けれど、私が選んだ道は…やけに寒いな…


トンマンは眸を閉じた。






朝の光が公主の部屋に射し込む。

「公主様、ピダム郎がお見栄ですが…」

ソファの些か不満げな取り次ぎの声がする。

扉が開いてソファが入ってくるその後ろに待ちきれぬように入ろうとするピダム

「ピダム郎!」

ソファが止める間もなくひょこっと顔をのぞかせる


「ピダム…まだ着替えていない、少しだけ待っていろ」


寝衣のままのトンマンの姿に驚き顔を赤らめたピダムが慌てて後ろを向いた。

閉まった扉を見てトンマンは我知らず笑っていた。


トンマンはソファに見咎められようやく自分が笑っていることに気づいた。



トンマンは思う。 

此から先、幾つも別れも出会いもある、けれどきっと…

“ピダムお前は…私を笑顔にさせる者”


やはりローマへ行かなくてよかった…何故だか、不意にトンマンはそんな気がした。





雪の果て……

この時、この冬最後の雪がそっと朝日にあたって煌めき消えてゆく…


トンマンの面を伏せても隠しきれぬ微笑み。



春の訪い…


新羅の、花の頃はあと僅か。







*『雪の果て』お読み頂きましてありがとうございます。

“雪の果て”これは最後の雪という意味があります。



冬眠中で2月ほとんど更新もないのにコメントをくださったりここを訪れてくださる皆様ありがとうございます。


短いですがこのお話しをうさこの今月のお礼とさせて頂きたいと思います。



ぺこりん




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