新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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桂花微笑


SS 愛してはいけないから

『桂花微笑』

*******

ひそひそと宮殿の片隅で女官達が囁きあっている。

「ピダム様が……」

「え、聞こえないわ」

「もぅ………」

「ええーー!!」

「声がおおきい!」

「でもそれ本当なの?」

「私最近司量部の彼ができたの、だからこの情報は間違いないわ。」

「…それちょっとまずくない…」

「えー‥もちろん内緒、内緒。そんなこといいから…」

「そうね、それよりピダム様がご自分のお屋敷に女人をとうとう入れられた、ということよ」

「ええ…陛下に内緒で女人を囲うなんて…」

「うーーん陛下に知れたらどうなるかしら」

「怖いわ…」

「…うん、でも陛下はきっと何も仰有らないかも…」

「えーーそれってますます怖いわ…」

という会話がこっそりなされていたそのころ司量部でも同じように

「ヨムジョン、ピダム公が視察の際に女を連れ帰ったというのはまことですか?」

ミセンがニヤニヤ笑いをしながら扇の向こうから問う。

ヨムジョンがこれまたニヤニヤ笑いで

「もうお耳に入りましたか」

と言う。

「ピダム公が女に目覚めたのはいいですが…陛下にばれて伽をおはらいばこになってもこちらとしては痛いですが…しかし陛下に隠れて女とはなかなかどうしてやはり我が一族」

ミセンの笑いはますます下品になる。

「…まあ、陛下のことですから臣下の女ごとき鷹揚に構え知らぬふりをされるやも…」

少しの沈黙の後

「本当にそう思いますか…?」

「……いえ…かなり雲行きは悪くなる気がいたします…」

そこで顔を見合わせた二人は思わず押し黙った。



仁康殿の庭園では神国では珍しい桂花が咲いていてその甘く芳しい香りで辺りを満たしていた。

女王は白練、欝金、真朱の重ねに金銀の秋の草花紋様刺繍の衣でその桂花の花の香りを移した黄金色に耀く花酒を手に女王らしく典雅にピダムに微笑みかけた。

(ピダムにあの噂のことどうやって訊こう…)



雑務に追われてこのところ日々の女王への目通りがなかなか思うように出来ずにいて、ようやく片付けてかけつけても何故かしら此のところもう遅いですからとか明日が早いですからとか女官や果てはアルチョンにまで阻まれて女王に会えずにいた。
それが今日はどうしたことか女王から顔を見せよとのことずてを受けて喜び馳せ参じたが何故かしら女官達がの視線が冷たい。
しかし相変わらず陛下は美しく可愛いくるんとした目元ふっくらとしながらもきゅっと口角の上がった唇、紅をうっすらと刷毛た磁器のような透明な艶のある頬、そして 怜悧で知己にとんだ眸何処かそれはいたずらっ子のようにも見える時があるが…ん?なんだ?睨まれた!?
いや笑っておられる…が…とピダムは戸惑いながらも久しぶりにゆっくり会える喜び勇む心が先立っていた。

「ピダム…此のところ顔もみせなんだな司量部は多忙とみえる」

「は?‥いえ…」

尚も微笑みを増して女王は問いかける。

(女を私邸に置いておると本当か…ピダム)

「陛下…?」

(夜のお目通りが叶わぬのは陛下の御意ではないのですか?)

「恐れながら私は昨夜もその前夜もお伺いいたしたのですが…」

「え!?……ふぅーーん」

(…ということは、ピダムが女官に阻まれたということか…とするとやはり噂はかなり広がっているな…チュクパンが言いにくそうに私に耳打ちしてからそんなにたってないのに…)

「陛下………?」

「いや、それよりピダム労う暇もなかったが先だっての国境視察は御苦労でした視察にとどめよとは申しましたが神国の民を救ったことは公としての見事な振る舞いといえよう」

「ありがとうございます。」

優しく褒め労る言葉を貰いながらも何故か…これではまるで女王とただの忠臣ではないか…いやそうには違いないが、なにかよそよそしさを言葉のなかに感じた。

「陛下」

ピダムは躊躇いながらはす向かいから女王の杯を持とうと伸ばされた指先を捕まえた。

「何かございましたか…?」

「………」

手を引こうとしたがピダムが捉えて離さない。

(何か…?直接訊けと言うのか!?お前私以外と情を交わしたのか?…と)

「ピダム、離せ」

「…………」

「嫌です」

「ピダム公」

「陛下…」

なんだか女王の心配と彼女自身気づかぬ不安がピダムの我存ぜぬ呈で腹立たしさに変わってきた。

「ピダム公、なにやら先の視察にて土産を持ち帰ったと聞いたが…?」

(さあ、ピダムどう応える)

「土産…?申し訳ありませんピダム不調法にて…」

(やはりフギョンを始末した証しは持ち帰るべきだったか…)

「不調法者にしてはなかなかな土産と聞き及んでいるが?」

「はぁ……??」

ピダムの手から逃れようと動かすがピダムも逃さぬよう指を絡めて離さない。

(なに!?……陛下は何をおっしゃっているのか?)

(ピダムしらをきるつもりか!)

貼りついたような微笑みの女王と戸惑いながらも必死でなにやら彼女が怒っているらしいことにようやく気づいたピダム。

「痛いピダム…」

逃さまいと強く握り過ぎたか…その声にピダムは慌てて手を引いた。

「……申し訳ありません」



「…………ピダムまだ私に見せていないものがあろう」

(陛下にお見せしていないもの…、視察から持ち帰ったもの…!!)


「陛下…あの土産のこと何故ご存じなのですか…?」


「…………」

「あの者あれはフギョンに連れ去られ殺された者の娘…身寄りとてない」

(だからお前がお前のものとした、とでも?)

「………だから…?」

「はい、幸い鄙で暮らしおりますには父親の教えからか一通りのことは身についておるようでしたので、女官にと思い連れ帰りました。」


「……えっ…女官」

「はい」

「ならば私邸に置いておくのは何故だ」

「?一通り身についていると申しましてもやはり少しは陛下をお守りする術など身につけさせねばと思い僅かですが鍛錬させておりました。」

「…ふぅん………そうか」

(本当か…?)

「ならばピダムその土産直ぐにも欲しい」

「然しまだ鍛錬が途中ですが…」

女王がじっとピダムを見つめた。

「鍛錬なら宮殿でも叶おう、ピダム…してその者は幾つになる?」

「はい、まだ十を過ぎたばかりかと」

「えっ……そうか十か…」

「うん、それならやはり早よう連れて参れ、女官達も妹のように可愛がるであろう」

「賜りました。」

(……然し何故陛下はご存じであったのか?)

(なんだ、女官、女官まだ十かまったく兄貴ときたら早とちりにも程がある…)


女王はもう一度ピダムを見つめた、そして…


「ピダム、そなたから土産をもらうのも悪くはないが…私はお前が摘んでくれる野の花が好きだ」



「陛下…」







離れた手をもう一度ピダムの手に重ねた女王の微笑みは柔らかで、染み入るように清んだ秋空のように美しく、漂う桂花の甘き香りのようにピダムの心に咲いた。







*『桂花微笑』お読みいただきましてありがとうございます。


秋、丹桂の香りに包まれた午後の二人のお話です…。












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