新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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鳥のように樹のように

SS 愛だと知らず


*このSS は777リクエストの時777とは別に お寄せ頂いたものでうさこのお話を好いてく ださってのことと思い。 書いてみました。

◎lastリクエストSS 第3段




『鳥のように樹のように』



******


樹々は真っ直ぐに大空へ向かい。

梢の鳥は樹々の示す遥かな空を目指す。

そして、空はただ高く青く澄み渡る…



ある日ピダムは他の花郎徒とは離れ修練場で一人剣の鍛練をしていた。

ピダムが舞うよう風を切り回転しながら宙をける。剣を突き出す着地すると同時にその剣が斬る風のうなるような音、再び舞うような足さばき、優雅に美しいそして一分の隙もない剣と躰は一体となりこれが国仙愛弟子の技さもありなんと日頃ピダムを面白からぬ風にみる花郎徒も遠巻きに口には出さぬがその動きのすばらしさに目が離せずにいた。

ただ寡黙に木刀を降り下ろしているのはユシンのみポジョンは己の目がそれを見てしまうのを厭うかの様にさっさとその場を後にしていた。

トンマンはピダムを伴い市いに赴き民の様子など見たいと思い鍛練場に来たがユシンもいることに気づき

「あっ…」

(ユシン…)


(ヨンモを選んだ…それが仕方のないこと、正しいことだと知っていても、まだ会えば胸が痛むのに…)


声をかけそびれて踵を返した…。
…とピダムが、

「公主様」


後を追いかけてきた。

「公主様、何処へ行かれるのですか?」

「ピダム」

「お出でになったのに黙って行ってしまわれようとなさるから追いかけてきました」

「……うん、市いに出ようと思い供を頼もうと思ったがただ修練の邪魔をするのは本意ではないから…」

「ピダムは修練より公主様のお供がしたいです」

「ピダムっ」

ピダムの軽口にやっと笑顔を取り戻したトンマンは

「アルチョンに頼もうとおもったが…」

「酷いです公主様」

拗ねたようなピダムの物言いにあははは…とやっと楽しげに笑ってトンマンはピダムを見つめた。

「ピダム、お前と行く」

「はい、公主様」

そして、二人は連れだってその場を後にした…


そんな二人の後ろ姿をユシンは黙って見送り一瞬眸を閉じ想いを封じ込めるかのようにまた黙々と木刀を降り下ろした。



公主として復権してから公務に忙殺されがちになるが民の暮らしぶり市場の動きをみる為に宮殿の外へでることはトンマンにとって仕事のひとつでもあり窮屈な時間から逃れることのできる唯一の一時でもあった。



トンマンはピダムは賑やかで活況がありどこか猥雑でもある店先や物売りの声を聞きヨムジョンの店にも立ち寄り久しぶりに胸が締め付けられるような思いから心が解放されたような気がした。


「公主様、」

「せっかく宮殿の外に来たのですからもう少しだけ足をのばしませんか?」

「………」

「ダメですか?」

ピダムは表情も明るくトンマンの心を思い尚更屈託がないように振る舞った。

「行きたいのか?」

「はい!」

ピダムにつられるようにトンマンは可愛いい笑顔をみせた。

「少しだけだぞ…」

「はい」

ピダムは満面の笑顔で応える。

「ところで何処へ行くのだ?」

「はい、米の収穫には間がありますがまだ瓜や夏菜、そろそろ早い豆に実が入っております、ご覧になりませんか?」

トンマンはピダムの思いもかけない提案に。

「そういうことか!視察だな。」

いたずらを見つけた様に笑いながらトンマンがそう言い

「はい、遊山ではなく視察です」

笑いながらピダムが応える。
視察という名目が宮殿を抜け出したトンマンの心を軽くする。


「ピダム、あれは?」

「なあピダム、ピダム、あれは?」

袖を引かんばかりに次々にトンマンに質問攻めにあいながらも

(なんか…二人っきりって久しぶりだな)

そうピダムは思った。
寄り添い歩く美しい二人の姿は貴族の娘と花郎と見え村人達は農作業の手を止めて見蕩れている。



二人は村人から借りた馬で道を反れて僅かに上り道を暫く行く。

「わぁー」

目の前に山スグリやナナカマド、グミの実が揺れている…

「美味しいですよ」

笑いながら言いピダムはトンマンを支えるように馬から下ろした。

ピダムがスグリの実をトンマンに差し出す。
パクりとトンマンが食べチュッと口をすぼめる。

「酸っぱくて甘い」

ピダムは可愛いい唇から視線が外せない。

「何かついているか…?」

ピダムは困って

「べ、別に…それより先程から雛の鳴き声がします」

トンマンは耳を澄ませる…

「あ!本当だ」

鳴き声の方に二人が近寄ると草影に巣から落ちたのだろう小さな雛が助けを求めるように鳴いていた。

「ピダムっ」

ピダムは頷き雛を掬い上げ巣へそっと戻してやった。


ピダムは急に悪戯っぽく笑うとゴロンと急に草の上に寝転がった。

「ほら、こうすると空も樹も鳥もよく見えます」

呆れたように笑いながらトンマンもピダムの横に座った。

「公主様も、ほら…」

躊躇うトンマンの袖を引き

「あっ…」

ピダムの胸に倒れこむようになり腕枕されて仰向けになった。
起き上がろうとしたが見上げた空があまりに青くてトンマンは起き上がりそびれた。


しばらく二人は草の上に仰向けてただ梢の向こうの高く青い空を見ていた。

先程、巣にもどした雛や仲間の雛達の小さな囀ずりが聞こえている。

梢に光が透ける…

「可愛いかったな、あの雛」

「はい」

「あの雛今頃、メンメでぶつよ、なんて叱られているかな…」

「!公主様はおありなのですか?」

あはは…トンマンは笑う

「そうは言われたがメでぶたれたことはないな」

「あれは痛いです」

「お前、国仙に?」

「…………」

自分で言い出しながらソッポをむくピダムをなんだか可愛いく思いトンマンはそままでピダムの肩に頭を寄せた。
ピダムはそんなトンマンの仕草にドクンッと胸が高鳴った。


「公主様…」

トンマンのそっともたせかけた頭を軽く抱くようにピダムは引き寄せた…

「ピダム…」

天へ向かい伸びる梢、名も知らぬ鳥が空に高く飛んでいく、草の上の二人は流れる雲を見ている。



「公主様…ピダムは決して公主様のお側を離れません」

不意にピダムが言った。
それはユシンをへの想いを封じる彼女の心に寄り添う言葉であった。


「……付いてくるか?」

「はい…」



二人はただ樹々をそよぐ風の音を聞いた…


(トンマ俺はあの鳥のようなものかもしれない、…そしてお前は俺の選んだ公主様だ、俺が鳥なら剣という翼でお前を護る…)

ピダムは知らないその翼が時に彼女を傷つけるかもしれないということを…

(ピダム、お前がともに来ると言うなら時に私はお前が羽を休ます樹になろうそしてお前が迷わぬように標となろう)

トンマンは知らない物言わぬ樹は鳥の言葉に応えられぬことを…


風がそよぐ時の中、二人はまだ運命を知らない…


愛だとしらず………ただ、求めあう…








*『鳥のように樹のように』
お読み頂きましてありがとうございます。

これはピダムの剣についてうさこなりに書いてみたものです。

頂いたリクエストではピダムの剣(剣舞)とあり少し考えましたが…華麗な装束を纏うピダムも素敵かとは思いましたがうさこの世界のピダムの本質はストイックなところにあるように ̄(=∵=) ̄は今のところ考えています。
なので“若き日のピダム、ピダムは鳥で剣はその羽”というイメージになりました。
リクエストともしイメージが違ったら申し訳ありません。
(ぺこりん)
そしてピダムが鳥ならきっとトンマンは樹なのかな…と、そして空を目指す二人です。




*メ(鞭)

「メンメで打つよ」…日本語の「メー!」と叱るときの語源だとか…

韓国語の発音と日本語の発音が古代では非常によく似ていたそうです。(そうかもねー…なんて頷く ̄(=∵=) ̄です)(笑)





*6月10日1100拍手御礼
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雨契

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長霖


SS 愛してはいけないから

『長霖』

******


白い梔子の花の香りの中に憂いげな雨音が続く…


その音に混じり足音が聞こえてきた…

「ミセン公、ミセン公…」

いつものように美しい女官に戯れかけるのを遮るようにヨムジョンが袖を引いた。

「なんと不粋な、みて分かりませんか?」

「……」

「いま、いいとこ、いやいま少しで…」

あー、もう…と言うようにミセンはヨムジョンを見た。
ヨムジョンは四の五の言うミセンを引っ張り誰もいない部屋に入った。

「ヨムジョン!まさか、いやまさか…」

真剣な顔でヨムジョンはミセンを見つめる。

「?」

「いけません、いくら私が艶福家といっても男はちよっと…いや美少年なら一度いや二度くらいは…」

ヨムジョンはミセンの妙な誤解に鼻白みながらも気を取り直し

「ミセン公、早とちりにもほどがありますぞ!」

「早とちり!?」

頷くヨムジョン

自分とヨムジョンを指すミセン、しかめっ面で首をふるヨムジョン。

「…ではなんでここへ!?」

深いため息をつきながらヨムジョンは

「ミセン公は近頃ピダム公が陛下の後寝所へ呼ばれぬのをご存知ですか?というかその噂をご存知でしょうか!?」

「なんと!!」

こんどはミセンがヨムジョンにグイッと顔を近づけた。

「お顔が近すぎます」

避けるようにしながらヨムジョンが言う。

「……それは一大事ではないか!!」

(反逆者であった我々がピダムの傘下にいるのもピダムが姉上の息子であるからばかりではない、ピダムの剣の腕、恐ろしいほどの知略、我々以外に結局は係累のないところ、そして何より命とりにもなりかねるので表沙汰にはなかなかできぬが陛下とピダムの夜があるということがもう一度我が一族が玉座に手をかける機会を掴むことになると思うからだ…)

目まぐるしくミセンは頭を回転させる。

「そのご様子では公はこの話はご存知なかったのですね」

「………確かなのですか?」

「ですからそれをミセン公にお伺いしようと参ったのです。」

「………うーーんこれは一大事です…陛下が空閨ですか…いや空閨とは言わぬか、だが一人寝なのだから…」

(これは不味いことになった)

ミセンはぶつぶつ言いながらヨムジョンを置き去りに部屋を出ていった。

ヨムジョンはミセンも知らぬ噂の信憑性をもう一度探るべくその場を後にした。



そのころトンマンは毎日毎日片付けても片付けても減らぬ山のような陳情などを前に黙々と責務をこなしていた。
常ならトンマンが呼ぶか察しのいいピダムがやって来て手伝い彼女の苦労を軽減してくれるのだが、そのピダムが来ない。
ピダムもピダムで人の何倍も働いているのだこれではもたぬであろうと女王然と「特に急でなければそなたも多忙であろう暫くは助けには及ばぬから司量部でその職務のみに専念せよ」と申しつけたはいいがそのせいでトンマンの仕事は夜中にまでおよび寝所にピダムを呼ぶとかそういうことなど一切出来ぬほどその仕事は山積みになってしまっていた。


(ピダムがいるといないでこうも違うなか)

「困ったな…」

女王は誰にも聞こえぬよう小さくそう漏らした。

そして一度ピダムのことを考えてしまうと頭の中に次々にピダムの顔が浮かんできて

「困ったな…」

こんどは意味をかえてそう言葉を漏らした。

書簡に集中しようと思っても出来ない…
トンマンは扉を見つめた。


(こんな時に限って律儀に命令など守るなピダム!)


しばらく空を見つめきゅっと拳を握りしめると彼女は椅子を立ち

「少しだけ外の風にあたろう」

そう言う女王の言葉に女官は
「外は雨でございますが?」
という言葉を危うくのみこんだ。




仁慶殿を出て女王の足は自然に司量部へ向かっていた。

(少しだけ様子を見るだけだ怠けてないか見るだけだ)

いつも通りのつもりがついつい急いたようになり後れがちになる伴の女官達のことさえ気づかなかった。


執務室の扉が急に開き…

「ピダム」

急に予期せぬだが一番ききたかった声に呼ばれたピダムは驚き椅子から立ち上がった。

「陛下!!」


彼女の髪も衣も冷たくしっとりと湿り気を含んだ姿はピダムを慌てさせた。

「陛下!…どうして」

「お呼びくださればピダムが参りましたが…」

女王は何も言わぬ。

外にはただ長霖の降りしきる細い雨音が続いている…

「陛下…」

「………」


ピダムを前に女王は気づいた

(会いたかったんだ…ただお前に会いたくて)

「お前の仕事はどうなったか見に来たのだ」

ピダムの顔を見て安心した女王は少し決まり悪そうに言う。

「仕事でございますか?…それならば先程からすでに終わっておりますが!?」

「そうなのか……ならば良いのだ」

そう言って彼女は踵を返そうとうる

「お待ちください」

ピダムは反射的にその袖を捕らえた。

「お一人でお戻りになられるのですか?」

「…そなたの仕事は片付いたのであろう」

「はい、ですからもう御命令をお解きください」

「………」

「そなたも多忙であろう暫くは助けには及ばぬから司量部でその職務のみに専念せよ、と仰せられましたが只今御覧頂きました通り火急なものは全て片付けました…故にお伴もうしあげてよろしいでしょうか?」

「……でも…でも付いて参っても仕事だらけだぞ」

女王はピダムの言葉に少し心弾む自分を感じて誤魔化すようにそう言った。

クスリッとピダムは笑い

「構いませぬ、ピダムは陛下とご一緒であればそれだけで幸せでございます」

ピダムの言葉に女王は自分の頬が紅くなるのを感じた。

「お前は仕事好きだな…」

「陛下と剣の次には」

「……ピダムは呆れたやつだな」

女王は笑い頷いた。

「やっぱりきっとお前と一緒のほうが早いからな」

「はい、お伴いたします」

許しを得てピダムは長霖の晴れ間のように笑った。
待っているのは書簡や陳情の山だとしても仁慶殿へ向かう二人の足どりは軽かった。


ヨムジョンとミセンは根も葉もないけれどどこか真しやかな噂にまだ振り回されている。



だが、甘い花の香に包まれた仁慶殿の二人は止まぬように降り続く長霖の雨音さえ耳に心地よく響き…書簡を取るとき触れあう指先にも心でそっと幸せを感じていた…








*『長霖』お読み頂きましてありがとうございます。

昨日から ̄(=∵=) ̄の処は梅雨入りしました。
なので今も雨が降っています。
昨日雨の音を聞いていたら脳内に梔子の香りがしてこのお話が浮かんできました。

雨の中にこの花の香りがするとその姿を探してしまいますよね…











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茶香梅香

SS 愛してはいけないから

『茶香梅香』

*******

葉を揺らし緑風薫る頃、梅実たわわにその木を揺らす…


ピダムの別邸にその日お忍びで訪れる女人の姿があった。


「陛下到着いたしました。」

貴族の女の乗る輿は邸の前では止まらずその中まで乗り入れたため誰もその姿を見ることはできない。

供は三人の女官と数名の護衛が付き従っているのみである。

輿の垂れ布が静かに上げられようやくトンマンは言った。

「輿はいやだと言ったのに、周りの景色があまり見られなかった」

ピダムは言う

「申し訳ございません、ただアルチョンがこうでもせぬと陛下の外出など許しません」

「アルチョンか…アルチョンは堅いんだ」

少し口をとがらせる女王の宮殿ではなかなか見せぬ口調にピダムは笑みをもらした。

トンマンの手を引いて輿から下ろし離そうとした彼女の手をそうさせぬように少しだけキツく握った。

「……」

「……」

握られた手を振りほどくでもなく少し照れてうつむくトンマンを横目で見るピダムはなんだか嬉しさを隠しきれない。

「中に参りましょう…」

「‥庭も見たい」

「…はい」

二人が邸に入ると先程からしていた爽やかな香りが不意に一段と鮮やかになった。

「ピダム、これは…茶の香りのようだが?」

「はい、茶葉は蒸し乾かしこれを拍ちそして穿ちその後炭火でさらに乾かします」

「……?」

「この私の邸では僅かな量のみですが茶葉を作っております、宮殿でお使いになる唐物のようのはまいりませぬが…」

「ほう、まるで茶邸の香りだな」

「昔、師匠が茶は気を調え毒を打ち払うと申しておりました故私もそれにならいおります」

「そうか、そうかもしれぬな…このような香しさ…」

「お気に召しましたか…?」

「ああ…」

トンマンは器の中の美しい翠色の茶を一口飲んでそう言った。

「庭をご覧になりますか?格別のものもございませぬが」

そう言ってまたピダムは女王に手を差し出した。

なんとなくきまり悪くトンマンがその手を避けようとするがピダム少し傷ついたような眸とぶつかり

「ピダム、そんな顔をするな、狡いぞ」

そう言って女王はピダムの手をとった。

「お前は離すな、離していいのは私だけだ」

「…離されるのですか?」



「……離さない」


庭へと手を繋いで歩きながら女王の少しの沈黙の後の言葉にピダムは繋いだ手にそっと口づけた。

庭では召人たちが梅の実を蔓篭に集めている。

「実梅をどうするのだ?」

「塩漬けにいたしまして梅酢を造ります、又蜂蜜に漬けたり燻したり様々に保存いたします」

「……ふぅーん」

なんだかちょっぴり拗ねた様子の彼女に

「陛下?」

「お前は物知りだな…私は梅のことも茶のことも知らない」

「陛下、陛下…梅のことも茶のことも下々のことでございます」


「………」


「陛下……梅の実を拾ってご覧になりますか?」

トンマン驚いたようにはピダムと梅の木と召人の姿を代わる代わる眺めてコクリっと頷いた。

ピダムは召人たちを下がらせて驚く女王をよそに目の前の梅の古木に登った。

「!ピダム…」

ピダムが軽く木を揺らすと緑や翠色、黄味がかってほのかに紅味をおびたたくさんの梅の実が落ちてきた。

「わぁー」

思わず女王は女王らしからぬ童女のような声を上げた。

「拾って…」

「うん」


蔓篭にたくさん集めて満足気に彼女は木の上のピダムを見上げた。

初夏の陽射しが眩しくてピダムの顔が見えない…

ピダムは実梅を持って自分に向かって微笑む愛しい女人を見つめて思う。

(おそらく他の者ならば平凡な光景、けれど自分と女王にはこの一瞬の幸せがもう一度あるだろうか…)

「…ピダミっ」

そう彼女は呼んだ。

ピダムは羽でもあるかのようにヒラリと木から降り立った。

そして彼は翼を広げるようにトンマンを包んだ。

頬を寄せたトンマンからはなんともいえぬ梅果の瑞々しい香りが、ピダムの衣からは焚き染められたような初茶の香りがしている…

「陛下、茶花も梅花もまた御覧にいれとうございます」

「ああ」


(次の季節も、又次の季節も同じ時の中にいよう…ピダム)



その瞬間に薫る、甘く清しい香りにこそ互いへの伝えきれぬつのる思いを託す二人であった…









*『茶香梅香』(さこうばいか)お読み頂きましてありがとうございます。


茶葉の香り、梅の実の香り、とても素朴で里山の景色に合う、又茶の香り、梅花の香りはどちらも高貴で気高くもある気がしてこのお話を書きました。

お茶のことは時代はもう少し下った唐時代の茶経に基づいています。
ピダムがこっそりお茶作り!?(笑)の巻&トンマン梅の実拾いの巻きです(笑)


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