新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

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藤翠の闇

愛してはいけないから

*このSS は777リクエストの時777とは別にお寄せ頂いたものでうさこのお話を好いてくださってのことと思い。
書いてみました。

◎リクエストSS 第2段



『藤翠の闇』


*******


翠巒の迸る命のような上昇する新緑、そこに山藤の紫の花房が下降の気で絡みつく、上昇と下降の夏へと向かう春烈なる鬩ぎ合い。



「ピダムあの者か?」

「そのようにございます」

女王は宴の席でひときは目立つ美貌の女に眸を当てた。
その女は妖艶でありながら淑やかな物腰…滴るような絢爛たる花の美しさをもっていた。

羽扇で招くようにしてチュンチュがその女を呼んだ。
優雅に彼女は近づき礼をわきまえた位置で止まり頭を垂れた。
チュンチュは自ら段を降り彼女の手を取り女王の前に進ませた。

真骨の公子に手を取られる娼婦…。

「陛下これが巷で知らぬものはおらぬグムファにございます」

「……その名は聞き及んでおった聞きしに勝る美貌だな」

女王はにこやかに微笑んだ。

「御挨拶申し上げよ」

グムファは静かに面を上げ貴婦人のごとき礼をとった。

(陛下…お美しい、私が容貌で劣るとは思わない…けれど、この私が気圧される気がするこれが王という者か!)

そしてグムファは次に誰にも気づかれぬよう女王の下段に彼女を護るように立つ男を見た。

(これが噂の司量部令…女王の男で相当の切れ者、しかも武骨な軍者や剣さえ握れぬ貴族のなかでその容貌は抜きんでている…これはたしかに公子様が疎んじられるはず)


そして、これはただ戯れに娼妓を女王も臨席する宴に招き入れたのではない。
グムファは新羅はもとより近隣の国々は勿論遠く唐まで聴こえる美貌の女だ。
その女を女王に引き合わせる。
これにはチュンチュの発案によるある計画の為であった。


宴の後…

「陛下、いかがにございますか…あの者なら必ず百済の王を調略できましょう」

「………」

「戦わずして勝つ」

チュンチュは少しおどけて言い女王とヨンチュン公を見た。

「グムファとは考えましたね」

ヨンチュンは感心したように言う。

「あの者ほど巧者は他におりますまい」

なおもそうチュンチュが続ける。

女王の御前であるとヨンチュンは少したしなめるように咳払いした。

女王は二人のやり取りに笑い

「グムファの巧者はヨンチュン公もチュンチュもよくご存知のようですね」

「えっ、いや男ならグムファを拒める者などおらぬだろうという例えです…ねえチュンチュ公。」

チュンチュは尚も笑い

「いやいや…叔父上大貴族の男でグムファを望まぬ者などおりますまいというか…知らぬものはないでしょう…しかもなかなか手強い」

「…男ならグムファを拒めぬ…大貴族ならグムファを欲すれば得られるのか?」

女王というより好奇心旺盛なトンマンは一人の女としてグムファに興味をそそられた。

「まあそうですが…グムファしだいでもあります。」

チュンチュは言う。

「そのような者を如何にして味方にしこの役目としたのか?」

「陛下、新羅に対するグムファの忠誠は確かにございますというより百済を憎む心に間違いは無いと申し上げたほうがよいかもしれませぬが…」

「それはどういうことだ?」

「グムファは元々は百済の貴族の出でございます。謀叛の疑いで一族を惨く失い己は奴婢となりそれを嫌い我が新羅にまいったのでございます。」

「………」

「陛下、このチュンチュの策いかがでございましょう?」

「確かにグムファというあの者の眸はそうだな、一軍の将のようであった……」

(かよわき女を敵地に送りこむという感じがしない)

「チュンチュの策試す価値がありそうだ」

ヨンチュンも女王の言葉を聞き満足げに身内である甥を見た。
が女王の次の言葉に二人臍を噛んだ。

「仕掛けは司量部へ任せることとする」

女王はチュンチュとヨンチュンに何も言わせぬ口調でそう言った。

「陛下!」

「チュンチュ、ヨンチュン公ご苦労でした…グムファの出立までの間不自由なく過ごせるよう取り計らうように。」



「ピダム様…」

宴の後女王を追おうとしたピダムをふと呼び止め者がいた。

ピダムは振り返った。
それはグムファというチュンチュが連れてきた女だ。

(何だ?…奴が間者に仕立てて百済へ送り込むとかいう女ではないか)

「不躾に御呼び止めいたしました申し訳ございませぬ」

「先程チュンチュ公より紹介頂きましたグムファにございます」

「…ああ……たいそう忠義のお方とチュンチュ公よりお聞きしております」

「ほほほっ…」

グムファは大概の男ならこの微笑みだけでひと財産なげだしそうな笑みをピダムに向けた。

「はい、チュンチュ公よりの特にのお召しによりましてこのたび陛下のお役にたたせて頂けることとなりました」

「……そのグムファ殿が私に何か用でも?」

「ええ、でも‥此方へおこしになってピダム様…」

ピダムの袖に手をかけ秘密めいてグムファの眸が妖しく光った。



夜更けても姿を見せぬピダムに女王は少し不信に思い女官に

「ピダム公は…」

そう問いかけ途中で思い直したように口をつぐんだ。

(臣下を競わせ力をださせながらも牽制する…今宵は、いやしばらくはピダムは遠慮させねばならぬな…)

「もし、公が参ったなら私はもう休んだと伝えよ…取り次ぎにはおよばぬ」

そう言いながらも彼女の手は無意識にその胸を彷徨った。



春の夜風がグムファの頬をなでて通り過ぎる…

「ピダム様…このグムファはチュンチュ様の命いえ陛下の命にて百済王に抱かれまする」

「……」

「けれど、チュンチュ様は何をお望みであられましょう?」

「……」

「彼の王の首でしょうか百済一国でしょうか…?」

「‥そなた何がいいたいのだ?」

「いいえピダム様はご存じのはずチュンチュ様がもっとも欲していらっしゃる者を…この策のその先の意味を。」

(……この女)

「大事なお役目前で気が高ぶっておられるようだ」

「ピダム様、何故お避けになりますの」

グムファはその煌めく光彩を放つ眸でピダムを捕らえた。

「ピダム様…チュンチュ様の掌の中のこのグムファいかがなさいますか?」

「………」

不意にピダムはグムファをまるで口づけせんばかりに引き寄せ息もかかるほどの耳元で

「そなた、俺に己を欲しさせたいのか?…笑止!男は、いやこのピダムそのような思いを持たぬ女をこそ、欲する」

そう静かに低く囁いてその腕を突き放した。

「お役目、まっとうされよさすれば陛下もご満足なされよう」

そう言うとピダムはグムファを置き去りに何事もなかったかのように立ち去った。

「……‥」

グムファは屈辱的な悔しさと生まれて初めて感じる強烈なる恋慕の想いをこの時胸に抱いた。



女王はなかなか寝付かれず起き上がって女官に水を持たせた。

用は済んだが物言いたげに立ち去らぬ女官に

「いかがいたした?」

女王はそう問いかけた

「……」

「申してみよ」

「……公が‥ピダム公が一刻も、それ以上も前からずっと立っておいでになって…お取り次ぎできませぬと申し上げたのですが…」

「何‥」

「……わかった、ピダムを通せ」

間もなく入室したピダムに

「どうしたのだ…?」

「……」

「‥ピダム?」

「待っていてはくださらぬのですかピダムを」

「‥お前は時々子供だな」

そう言って女王は優しく笑った。

次に少し厳しい顔で言う。

「グムファのこと司量部に任せようと思う故に…」

「故にピダムは床を御一緒できぬのですか…」

「ピダム…」


ピダムは苛立ち立ち上がり室を出ていこうとした。

(政治だ…解っている与えすぎず奪いすぎない)

解っていてもピダムは解りたくはないのだ。
扉に手をかけた…

不意に…トンッと、トンマンは寝台から降り素足のままピダムを後ろから抱き締めた。


「!陛下…」

「ピダム…すまぬ」


背に当たる女王の躰が温かい。
ピダムは腰に回された手に手を重ねた。
彼は向きを変え彼女を柔らかく抱き締めそしてそっと離した。

(陛下が耐えよと仰せならこのピダム…耐えてみせまする)



「司量部令ピダム策の遂行は万全を期します」

「ああ…」




幾日かが過ぎグムファとその潜入を助ける司量部の配下はソラボルを後にした。

去り際にもう一度グムファは月城を見上げた。


「ピダム様…」





仁康殿の庭園に女王とピダムは立ち光る水面を見ていた…


「ピダム…」

「はい」

「グムファは出立いたした頃であろうか…」

「はい、配下の者をつけてございます」

「戦わずして勝つ、チュンチュはそう申したが…そうではないこれも戦だ将はグムファただ一人されどいやそれ故に司量部に申しつけた…勝利させよ」

「はっ」





女王はピダムを振り返り涼やかに微笑んだ…



その時、翠の風を運ぶ涼風と爛漫と咲き誇る花々の香気をはこぶ薫風が二人の上を新羅の初夏に向かって吹き抜けていった…





翠巒と山藤の光香たる美しさ…けれどその陰がつくる闇は濃くそして深い……









*『藤翠の闇』(トウスイノヤミ)お読み頂きましてありがとうございます。
今回は ̄(=∵=) ̄の好きな染色家の方の一文をアレンジしてSS に織り交ぜています。


リクエストは無窮の剣…『綺虎』のような感じのものをとのとことでしたがどうでしょうか?
今回立ち回りはなかったのですが…

ただもうお一方からピダム剣舞が見たいとのリクエストを頂いておりますのでそちらも出来るだけ早めに書いてみたいと思っております。←しばらくお待ちください(ぺこりん)
(剣舞でなくてもなんとかピダムの剣を書こうと思っております…出来るかな…笑)

それでは皆様に感謝しつつ…お布団の中より ̄(=∵=) ̄がお届けいたしました。




*春烈(しゅんれつ)← ̄(=∵=) ̄造語です(笑)





(5月1日900拍手御礼)
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