新月の小部屋

気ままに善徳女王創作二次小説を中心に他にも赤と黒の創作二次小説を綴っております。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
別窓 | スポンサー広告 | ∧top | under∨

SSS空に届くほど

皆様へ

このSSS へのきっかけについて少しだけお話しさせてください(ぺこん)

このSSSは二週間ほど前に ̄(=∵=) ̄が:眞宵マイマイ 様のブログにおじゃまいたしました時『頬にピダムの指が触れて赤面している乙女なトンマン』という素敵な絵を拝見いたしまして ̄(=∵=) ̄の妄想のスイッチが入り勝ってにSSS を書いてしまいましたがマイマイ様が快くブログへの掲載を了承してくださいましたので恐れげもなくupさせていただきます。

「マイマイ様ありがとうございます。」

うさこSS の前語りも苦手なのですがどうしてもマイマイ様にお礼が申し上げたくて少し語らせていただきました。(ぺこん)

……………………


SS 愛だと知らず


SSS
『空に届くほど』


*******


木々に新しい葉が耀き光りを受けてそよぐ、見上げる空は遮るものなど何も無い

そして…眸を移せばピダムにはまるでそこだけがその煌めく時そのもののように思われた…

翠色の地に躑躅の花が織り出されたに衣に金刺繍のある碧色の帯を纏ったトンマンが数名の女官を従えて中庭を歩いていく。



「公主様、今日は乳母殿はご一緒ではないのですね?」

そうピダムは屈託のない笑顔で歩みより話しかけた。

「ピダムか、ああ…母さんはなんだかマンミョン夫人と話があるとか、出かけて行った。」

ピダムはちょっとほっとした顔で

「なんかソファ様は俺を嫌いみたいだから…」

トンマンはプッと吹き出して

「お前が誰かに嫌われるのを気にするのか?」

ピダムはちぇっという顔で

「…俺は…別にっ」


(俺は…公主様以外はどうでもいいです!)

トンマンは少しふて腐れたようなピダムの言いぐさに笑おうとしたがピダムの目があまりにその物言いとは別にトンマンにただトンマンに向かっているのに気づき

「…ピダム」

言葉を言えずじっとピダムを見つめた。

(このままお前の目を見ていると…「お前、私を好きなの?」と聞きたくなる)

トンマンはその秘かな思いを消すように

「…所でお前はは郎徒もないと聞くが?」

そう尋ねた。

「郎徒?ああ、」

「べつに俺は、いや私は必用だとは思いません」

「?」

「あんなの役にたちません!」

「貴族もか?」

「貴族?私はそれのみを頼みにはいたしません。」

「と、言うと?」

「公主さま…私は商人を使います。」

「…」

自分と似たきっと他の者が聞けば驚くような発想を事も無げに言うピダムをトンマンは好もしくおもう…ユシンにもアルチョンにも出来ぬ考えだ。

「そうか…役に立つな」

そうトンマンは言いピダムに微笑みかけた。

「そうですきっと役に立ちます、商人は度胸と金で動きますから。」

(お前だピダム役に立つのは…)

彼女はそう思ったが言葉には出さず代わりに足元の小さな花を摘みピダムに差し出した。

「ほら、ピダム」

「…」

「何時かお前もくれたろう、花は心を幸せにするんだ」

「…公主様…」

ミシルも貴族もむこうに回す公主の市いの少女のような仕草とはにかむような微笑みに思わずピダムはトンマンの柔らかな頬にかかる髪を手ですきそっと親指で彼女の唇を撫でた。

「!…」

「公主様、ピダムがお慕いすることをお許しください、ただ…ただお慕いすることを…」

「!」

(…ピダム、ピダム…お前は私を困らせる……)

「ピダム…」

風が頬に触れ、ピダムの唇がそっと…

「アッ…」

(触れらたら…どうしたらいいの…?ピダムぅ)

覇道を行く彼女の心の奥の不安をピダムが包む

(お前はそばにいてくれるか?ピダム…信じていいのか)


「ぁン…ピダムぅ…」

そっと唇が離れ

「公主様…離したくありません…きっともう離せません。」

ピダムはトンマンを腕の中に包むように抱いてそう言った。

(ピダム…私はお前にきっと何もしてやれない、それでも…それでも…?)

「公主様、ピダムは何も要りません…欲しいのは公主様だけです。」

(この空に届くほど俺はトンマンお前を…)


「………ピダム…」

(離せない…もうこの手を私はきっと離せない私を慕うという……お前が好き)

トンマンは思うのだった…



これから…幾つ二人の行く手に風が吹くだろう…


何時か、空に思いが届くまで…






スポンサーサイト
別窓 | 愛だと知らず | コメント:3 | ∧top | under∨

春雷

SS 愛だと知らず

『春雷』(微修正いたしました)

*******

春まだ浅い日、冷たい空気の中に紅梅白梅の香気が競い会うようにそこここから月城を包んでいた。

ソファがトンマンの身支度を整えるのを手伝いながら心配げに言う

「大丈夫ですか?お嫌ならお断りになられればよいのです。」

「母さんは心配性だな、‥大丈夫このくらいできなきゃ」

トンマンは白からごく淡い紅へ裾に行くにしたがい徐々に紅が濃くなる美しい衣に手を通した帯も金彩を施したものですらりとしたトンマンの華やかな美しさを引き立てていた。

「ユシン郎とヨンモ夫人、ハジョン公であろう?」

「はい、そのように承っております」

「心配ない」

「ですが…」

ソファは意地っ張りで気が強そうに見えて本当は脆いほど傷つきやすい公主を安じて胸を痛めていた。
ユシン郎とヨンモ夫人がその父であるハジョン公に伴はれ本日、新春と婚儀を無事すませた報告を兼ね挨拶に参ると言うのだ。
大貴族が婚儀のさいの祝いの品々への返礼に王の元へ挨拶に参じるのは慣例として解るが公主への挨拶とはソファはいくら考えてもミシル側の公主への当て付けか嫌がらせとしか思えないトンマン公主とユシン郎の想いを引き裂いておきながら…ましてソヒョン公にではなくハジョンに伴われてとはこの婚へのミシル側の力が窺われる。

鏡の中でそんなソファに辛い素振りも見せずかえって彼女を労るように見つめるトンマンにソファはもうそれ以上何も言えなかった。



ピダムは朝からずっといらいらと鍛練場で剣を降り下ろしていた。
遠巻きに他の花郎たちはそんなピダムに触らぬ神に祟り無しの態で近寄る者など誰もいなかった。

(まったく、あいつはなんでトンマンを悲しませる事ばかりするんだ!)

自分がトンマンを困らせることばかりするのを棚にあげてピダムは怒りの鎮まらぬままでいた。

(トンマン…また泣けずにいるのか?)



「ユシン郎」

しっとりとした声でヨンモは夫である男を呼んだ。
美しく艶ややかな妻をユシンは見た。

「公主様にお会いするのにどこかおかしくはございませぬか?」

ごく淡い桃花色に薄い水色を重ねた優雅な衣を身に纏いヨンモは柔らかな声でそう尋ねた。
女の衣に興味など全くないユシンにもヨンモの身支度が完璧なのは解る。

「お前におかしなところなど、どこにもないと思うが」

美しいとかいう誉め言葉などユシンの頭には浮かばぬらしい。
そんなユシンにヨンモは武骨だけれど偽らぬ心を見てとり優しく微笑みかえした。

(公主様はいったいどのようなお方であられようか?遠目でお見かけしたことがあるだけ…ユシンろうと想いを交わされていたなどと噂をきいたが…)

そしてヨンモは抜こうとすれば棘のようにより深く胸に刺さる想いを見せぬよう羞じらうそぶりでそっと夫の手をとった。



「公主様ヨンモにございます。」

ユシンが紹介するのをハジョン公は人の悪いニヤニヤ顔を扇で隠しながらみている。
トンマンは

「ユシン郎ヨンモ夫人おめでとう…」

いざ二人を目の前にしたら、震えず真っ直ぐ見つめてそう言うのがせえいっぱいであった。

「いやーまこと似合いの二人にございます。なによりの縁組みにございました。」

声高にハジョン公が言う。

ヨンモは公主を目の前にして驚きを隠せなかった。

(お見かけした時は遠目であったからしかとは分からなかったが…美しい方だわ、それに凛としていらっしゃる…)

何だかいつもより男らしく見えるいユシン、ミシルの血縁だけあって慎みの中にも隠しおおせない色香の滲むヨンモを見つめているトンマンはじっと、覇道の為に諦めたものへの痛みに耐えていた。
それでもトンマンはなんとか押し出すように言葉を紡ぎだした。

「ヨンモ夫人…ユシン郎は誠に誠実な方ですしかし不器用でもあります、がどんなことも最後は新羅の為もっとも最良な道を選ぶ方です。」

「はい」

「ユシン郎を助け新羅の為にお勤めになるよう。」

「はい、公主様必ずやおおせに従い新羅を公主様をお守りする子を授かるようユシン郎を助け勤めまする」

「…………」

ユシンは顔を赤らめながらヨンモを困ったような咎めるような目で見頭を垂れた



(何故あんなことを言ってしまったのだろう…)

ヨンモは邸に帰って一人考えていた。

(……あんな子供じみたこと、公主様があんなにも美しかったから?それとも夫がやけそわそわしていたから?…)

彼女は召人に命じて寝衣に秘密の香を焚き染めさせながら

(ううん違うは、あの時公主様がユシン郎を見た時彼は見たこともない目をしてあの方を見たから……)

ヨンモは立ち上がり自ら香が隅々までいき渡るよう衣を直した。



トンマンは一人室で椅子に腰掛け眸を閉じていた。
幸せな、少なくともトンマンにそう思わせる二人の姿…
盗られたくない、私にトンマンに賭けると命も捧げると言った心だけは…。
そのためには私はもっと公主として力を養はねば…。
そんな苦しい心を押さえこむようにしていた時


「公主さま」

扉の外から声が聞こえる。

「ピダムか?」

「はい」

「入れ」

ピダムはトンマンが心配でどうしても我慢できずやってきたのだ。

「どうした?」

「いえ、」

トンマンはピダムの物言いたげな顔を見て彼女は心に小さな灯りが点ったような気がしてクスリと笑いながら言った。

「せっかく参ったのだから梅でも見よう」

沢山の紅と白の梅が闇に灯火のように浮かび上がっている。
しばらく二人は何も言わず添うように歩いていた。


「ピダム…綺麗だろう、まだ他の花も咲かぬのに梅は美しい花を咲かせ香りも気高い。」

「…公主様知っておられますか…梅が下を向いて咲くと春雷が鳴るという言い伝えを」

「いや…初めて聞く」

「公主様、雷を呼ばぬよう微笑んでください」

「ピダム…」

「でも、もし下を向きたくなったらピダムをお呼びください」

「………」

「そうすればピダムが駆けつけ誰にも見られぬようお隠しいたします。」

そう言ってピダムは不意に隠すようにようにトンマンを懐に引き寄せた。

「ピダムっ…」

トンマンは驚いたがその懐の温もりが心地よくそのままにもたれかかっていた。
顔を上げようとしたトンマンの髪をピダムのすっと長い指がそっと押さえた。

トンマンはその時不意にドクンッ、と自らの鼓動が高鳴り始めどうしていいか分からなかった。


(春雷…)


早春の花闇の中、ピダムの腕の中で聞く自らの鼓動は春雷のごとく移りゆく季節の始まりの音のようにトンマン自身の胸に響いていた。






別窓 | 愛だと知らず | コメント:14 | ∧top | under∨

草春賦

SS 愛だと知らず


『草春賦 』

*******

草は香り桃の花は今は盛りと咲き春の声が聞こえるような日

「ピダム今日は上巳の節句だな」

「はい、民は薬草を摘みそれで躰を撫で厄払いをいたします。またそれとは別に摘んだ草で草餅を作って食べまする。」

「ほぅ…宮殿では薬湯に入り草や雪や桃の餅菓子を食べるだけだ」

「草摘みかぁ…ピダムぅ行ってみたい」

「然し急に宮殿の外へなど、乳母殿に叱られます」

「母さんかぁー…そうだピダム、チュクパンを呼んでこい」

「チュクパンをですか?」

「兄貴は薬草に詳しいから母さんに公主様の厄払いの薬草でも教えると言わせればいい」

「…………」

彼は知恵の回る公主の顔を感心したように見つめていた。

「どうした、ピダムお前は私と出掛けるのは嫌なのか?」

ピダムはトンマンの可愛いい我儘と彼女と一緒に出掛けられる嬉しさに顔がほころぶのを押さえながら

「仕方ありません…それではくれぐれもあまり目立たぬ身なりで決してピダムの側を離れませんよう」

そう言った。

トンマンはこのときばかりは少しだけ神妙な顔をした。



トンマンを馬に乗せてピダムは手綱を引きながら野の道すがら


「ピダム、あれは?」

「ああ、先ほどお話いたしました草摘みにございます。」

「あれが…ピダム降りたい」

「しかし」

トンマンはピダムが必ず受けとめると知っているというようにふわりと馬から躰をはなしピダムに手を伸ばした。

ピダムはトンマンを抱きとめ地に降ろした。
そしてそのままそっと抱き締めるた。腕での中のトンマンはくりっと愛らしい眸とぷくんとやわらかな唇でピダムを下から見上げピダムの胸に甘い苦しみを与えた。

この辺りでは見かけぬ美しい貴族の娘に共のすらりとした背の高い野性的なまだ若い男を草摘みをする若い娘たちが遠巻きに見ていた。

「これはなんという草だ」

「蓬草にございます。餅にすれば旨いですまた蓬草は茶にも薬湯にも灸にもなり、血止めにもなります。」

「なんでもしっているなお前は役に立つ」


ピダムは鼻の頭をポリッと掻きながら真面目にそんなことを言うトンマンを愛らしいと思った。

トンマンは蓬草を摘んではピダムに持たせては民の暮らしぶりを眺めていた…

「ピダム草をいっぱい摘んだから餅が食べたい」

「え!?餅ですか…しかし蒸したりこねたり時間がかかります」

「でも、食べたい。」

「ピダムぅ」

この甘ったれた声でピダムを呼ぶ時は必ず次にとでもない我儘が飛び出すのだが

「はい」

つい可愛いくて返事をしてしまう。

(ユシンだとこうはいかないなーアルチョンなんてますますダメだ母親の胎内に融通という言葉を忘れてきたような者共だ)

トンマンは心でそう思った。

「……この先にいろいろ商う店が建ち並んでございますが」

「餅もあるのか?」

「あると存じますが…」

「ならば行こう」

ピダムが止める間もなくトンマンは歩きだした。



煮物や揚げ物な匂いにの中商いの売り買いの喧騒があちこちをにぎわしている。

「ピダム、面白いな」

少し興奮した様子の無防備なトンマンを愛らしいく思い

「迷子になられては困ります」

そう言ってピダムはそっとトンマンの手をとった。
珍しげに辺りを見るトンマンは無意識にピダムの手をキュット握り返した。

「餅屋がございました」

「どこ?」

「あそこに…」

トンマンはピダムの手を引っ張るようにして小走りになった。

ピダムはトンマンに引っ張っられたまま餅屋の前にいた。

「その草餅を二つくれ」

金を払い餅をトンマンに渡すとトンマンはパクリと食べ口に白い餅粉をつけて

「美味しい」

と満面の笑みをみせた。
その無邪気な様子に愛しくてみとれていたピダムの懐からさっと子供が金袋を掠め取った。

「このっ」

ピダムはトンマンの手をとったままその小汚い小僧を追いかけた。

そしてすばしっこい小僧を幾つか角を曲がった先の袋小路に追い詰めた。

そこには数人の人相の悪い男達がたむろしていた。

「おい、ここに小汚い小僧が来たろう」

「確かに来たが?」

「その小僧に用がある」

「そいつぁ俺の息子でさぁ、いったい何のご用で?」

「俺の懐から金を盗みやがった」

「…これのことで?」

男はぶらぶら金袋を目の前に持上げ揺すった。

「返せ!」

ピダムが言うよりはやくトンマンが言った。
男達はトンマンの美貌に目をみはりニヤニヤ笑った。

「そのお姫様と交換ならこの金を返してやってもいい。」

ピダムはトンマンを荷車の陰に隠すように座らせた。
そして血の気の多い一人が襲いかかってきたピダムは長い足で相手のみぞおちに蹴りを入れそれを合図のように次々に男達が襲いかかってくる、ピダムの拳は相手に当たる瞬間炸裂する。あっという間にピダムの足技と拳は男達を倒していった。
最後に残った頭らしい男が金袋をピダムにほうりなげ媚びるように笑った。

「お前のガキでもないくせに盗みなどさせるな!もっとも本当にお前のガキならなお悪いがな…」

ピダムは許さず拳を繰り出そうとしたが

「もういい…ピダムやめろ!」

トンマンのその声を聞きピダムはトンマンの肩を抱き寄せた。

ピダムは殺気の残る眸で男をいちべつし立ち去ろうとした…が、

「うぉぉー」

と、男がピダムの背に襲いかかってきた。
ピダムは片手でトンマンの眸を覆い隠しもう一方の腕で剣を抜き一撃で男を貫くように倒した。

ピダムのあざやかな立ち回りに人垣ができはじめていた。
二人はそれをぬうようにかわしてやっと人混みを抜けた。

(ピダム…怖かった…)

トンマンは心で呟いた。

ピダムの剣を見たのは初めてではないけれど…



陽が傾きかけた野辺にのんびり草を馬が食んでいる。

「餅、落としてしまった」

ぽつりとトンマンが言った。

「申し訳ありません」

「ピダム血が出ている」

「なんでもありませんこのくらい…」

トンマンは摘んでいた蓬草揉んで傷口に貼った。

「帰ろうピダム…母さんが心配する」

「はい」

「たくさん蓬草も摘んだ、帰ったら草餅を作ってもらおう」

そう言って微笑むトンマンを
ピダムはそっと抱き締める。


大きな春の夕陽はそんな二人を静かに包んでいた…





*こんばんは、お読み頂きましてありがとうございます。

じつはこのSS 一度全部消去されてしまい記憶をたどり再生させたものです。
夕方upしようとして何故か消去してしまいました。
いったんもういいや!と思いましたが思い直して頑張って再生してみました。

桃の節句(上巳の節句)にちなんで春草の香りを書いたものなので…やっぱりupしちゃいました ̄(=∵=) ̄










別窓 | 愛だと知らず | コメント:4 | ∧top | under∨

鳥のように樹のように

SS 愛だと知らず


*このSS は777リクエストの時777とは別に お寄せ頂いたものでうさこのお話を好いてく ださってのことと思い。 書いてみました。

◎lastリクエストSS 第3段




『鳥のように樹のように』



******


樹々は真っ直ぐに大空へ向かい。

梢の鳥は樹々の示す遥かな空を目指す。

そして、空はただ高く青く澄み渡る…



ある日ピダムは他の花郎徒とは離れ修練場で一人剣の鍛練をしていた。

ピダムが舞うよう風を切り回転しながら宙をける。剣を突き出す着地すると同時にその剣が斬る風のうなるような音、再び舞うような足さばき、優雅に美しいそして一分の隙もない剣と躰は一体となりこれが国仙愛弟子の技さもありなんと日頃ピダムを面白からぬ風にみる花郎徒も遠巻きに口には出さぬがその動きのすばらしさに目が離せずにいた。

ただ寡黙に木刀を降り下ろしているのはユシンのみポジョンは己の目がそれを見てしまうのを厭うかの様にさっさとその場を後にしていた。

トンマンはピダムを伴い市いに赴き民の様子など見たいと思い鍛練場に来たがユシンもいることに気づき

「あっ…」

(ユシン…)


(ヨンモを選んだ…それが仕方のないこと、正しいことだと知っていても、まだ会えば胸が痛むのに…)


声をかけそびれて踵を返した…。
…とピダムが、

「公主様」


後を追いかけてきた。

「公主様、何処へ行かれるのですか?」

「ピダム」

「お出でになったのに黙って行ってしまわれようとなさるから追いかけてきました」

「……うん、市いに出ようと思い供を頼もうと思ったがただ修練の邪魔をするのは本意ではないから…」

「ピダムは修練より公主様のお供がしたいです」

「ピダムっ」

ピダムの軽口にやっと笑顔を取り戻したトンマンは

「アルチョンに頼もうとおもったが…」

「酷いです公主様」

拗ねたようなピダムの物言いにあははは…とやっと楽しげに笑ってトンマンはピダムを見つめた。

「ピダム、お前と行く」

「はい、公主様」

そして、二人は連れだってその場を後にした…


そんな二人の後ろ姿をユシンは黙って見送り一瞬眸を閉じ想いを封じ込めるかのようにまた黙々と木刀を降り下ろした。



公主として復権してから公務に忙殺されがちになるが民の暮らしぶり市場の動きをみる為に宮殿の外へでることはトンマンにとって仕事のひとつでもあり窮屈な時間から逃れることのできる唯一の一時でもあった。



トンマンはピダムは賑やかで活況がありどこか猥雑でもある店先や物売りの声を聞きヨムジョンの店にも立ち寄り久しぶりに胸が締め付けられるような思いから心が解放されたような気がした。


「公主様、」

「せっかく宮殿の外に来たのですからもう少しだけ足をのばしませんか?」

「………」

「ダメですか?」

ピダムは表情も明るくトンマンの心を思い尚更屈託がないように振る舞った。

「行きたいのか?」

「はい!」

ピダムにつられるようにトンマンは可愛いい笑顔をみせた。

「少しだけだぞ…」

「はい」

ピダムは満面の笑顔で応える。

「ところで何処へ行くのだ?」

「はい、米の収穫には間がありますがまだ瓜や夏菜、そろそろ早い豆に実が入っております、ご覧になりませんか?」

トンマンはピダムの思いもかけない提案に。

「そういうことか!視察だな。」

いたずらを見つけた様に笑いながらトンマンがそう言い

「はい、遊山ではなく視察です」

笑いながらピダムが応える。
視察という名目が宮殿を抜け出したトンマンの心を軽くする。


「ピダム、あれは?」

「なあピダム、ピダム、あれは?」

袖を引かんばかりに次々にトンマンに質問攻めにあいながらも

(なんか…二人っきりって久しぶりだな)

そうピダムは思った。
寄り添い歩く美しい二人の姿は貴族の娘と花郎と見え村人達は農作業の手を止めて見蕩れている。



二人は村人から借りた馬で道を反れて僅かに上り道を暫く行く。

「わぁー」

目の前に山スグリやナナカマド、グミの実が揺れている…

「美味しいですよ」

笑いながら言いピダムはトンマンを支えるように馬から下ろした。

ピダムがスグリの実をトンマンに差し出す。
パクりとトンマンが食べチュッと口をすぼめる。

「酸っぱくて甘い」

ピダムは可愛いい唇から視線が外せない。

「何かついているか…?」

ピダムは困って

「べ、別に…それより先程から雛の鳴き声がします」

トンマンは耳を澄ませる…

「あ!本当だ」

鳴き声の方に二人が近寄ると草影に巣から落ちたのだろう小さな雛が助けを求めるように鳴いていた。

「ピダムっ」

ピダムは頷き雛を掬い上げ巣へそっと戻してやった。


ピダムは急に悪戯っぽく笑うとゴロンと急に草の上に寝転がった。

「ほら、こうすると空も樹も鳥もよく見えます」

呆れたように笑いながらトンマンもピダムの横に座った。

「公主様も、ほら…」

躊躇うトンマンの袖を引き

「あっ…」

ピダムの胸に倒れこむようになり腕枕されて仰向けになった。
起き上がろうとしたが見上げた空があまりに青くてトンマンは起き上がりそびれた。


しばらく二人は草の上に仰向けてただ梢の向こうの高く青い空を見ていた。

先程、巣にもどした雛や仲間の雛達の小さな囀ずりが聞こえている。

梢に光が透ける…

「可愛いかったな、あの雛」

「はい」

「あの雛今頃、メンメでぶつよ、なんて叱られているかな…」

「!公主様はおありなのですか?」

あはは…トンマンは笑う

「そうは言われたがメでぶたれたことはないな」

「あれは痛いです」

「お前、国仙に?」

「…………」

自分で言い出しながらソッポをむくピダムをなんだか可愛いく思いトンマンはそままでピダムの肩に頭を寄せた。
ピダムはそんなトンマンの仕草にドクンッと胸が高鳴った。


「公主様…」

トンマンのそっともたせかけた頭を軽く抱くようにピダムは引き寄せた…

「ピダム…」

天へ向かい伸びる梢、名も知らぬ鳥が空に高く飛んでいく、草の上の二人は流れる雲を見ている。



「公主様…ピダムは決して公主様のお側を離れません」

不意にピダムが言った。
それはユシンをへの想いを封じる彼女の心に寄り添う言葉であった。


「……付いてくるか?」

「はい…」



二人はただ樹々をそよぐ風の音を聞いた…


(トンマ俺はあの鳥のようなものかもしれない、…そしてお前は俺の選んだ公主様だ、俺が鳥なら剣という翼でお前を護る…)

ピダムは知らないその翼が時に彼女を傷つけるかもしれないということを…

(ピダム、お前がともに来ると言うなら時に私はお前が羽を休ます樹になろうそしてお前が迷わぬように標となろう)

トンマンは知らない物言わぬ樹は鳥の言葉に応えられぬことを…


風がそよぐ時の中、二人はまだ運命を知らない…


愛だとしらず………ただ、求めあう…








*『鳥のように樹のように』
お読み頂きましてありがとうございます。

これはピダムの剣についてうさこなりに書いてみたものです。

頂いたリクエストではピダムの剣(剣舞)とあり少し考えましたが…華麗な装束を纏うピダムも素敵かとは思いましたがうさこの世界のピダムの本質はストイックなところにあるように ̄(=∵=) ̄は今のところ考えています。
なので“若き日のピダム、ピダムは鳥で剣はその羽”というイメージになりました。
リクエストともしイメージが違ったら申し訳ありません。
(ぺこりん)
そしてピダムが鳥ならきっとトンマンは樹なのかな…と、そして空を目指す二人です。




*メ(鞭)

「メンメで打つよ」…日本語の「メー!」と叱るときの語源だとか…

韓国語の発音と日本語の発音が古代では非常によく似ていたそうです。(そうかもねー…なんて頷く ̄(=∵=) ̄です)(笑)





*6月10日1100拍手御礼
別窓 | 愛だと知らず | コメント:0 | ∧top | under∨

雪の果て

SS 愛だと知らず

『雪の果て』


*****


陽はゆっくりとその姿を現す時を伸ばし、けれど一度夜が訪れればまだ確かに冬の中にいるのだとその寒さが躰に感じさせる。

そんな闇を淡く凍らせる透き通るような降る雪に冷え込む夜。



トンマンは物語りを読み終えて飾り文字で美しく装飾されたその皮の表紙を閉じた。

細い指先がその文字を辿る…

ソファの入れた蒸して発酵した茶葉と山羊の乳の温かな香りが部屋中に広がっている。
その香りは砂漠を思いださせ、まるでいつかカターンおじさんが話してくれた宝石のような眸の人々の街、石の道はどこまでも続きその道を車輪を響かせ駆け抜ける戦車、橄欖樹の木々を渡り果物の林を抜ける海風…
皇帝はいるがそれは人々が選ぶ皇帝だという…“羅馬”

そして羅馬はそこから、どんな国にへもいけるのだと言う本当にそんなことがことがあるのだろうか?本当にそんなところがあるのだろうか…

あのときカターンおじさんの手をとり駱駝に乗れば其処へ行けたのだろうか…

そんなもしもが不意にトンマンの胸を幻の夢を求めるように高鳴らせる。

けれど彼女はその思いを鎮めるようにまた考える。



いや…
あの時、羅馬ではなくこの新羅を目指した。
どういう理由であれ…


そして私は今ここにいる。


剣を取り民をこの手で罰してまで秩序を守る。与えることは甘やかすことではない、むしろきっと与えられているということは苦しいことかもしれない…与えられているものが大きければ大きいほど…

搾取されるだけの一生からは開放してやりたい…甘くはない、楽ではないがけっして奪われない暮らし‥それを得る為には


“希望を与え夢を与える”


それが新羅を、民を強くする。

そしてそれは新羅がとるべき三韓一統への道だ。


それをなし得る為に今、私が目指すは女王になること王妃や副君などでは駄目だ王でなければそれはなし得ない。

羅馬を夢みることそれはしてはならない…

私の夢は希望は民と一つでなければならない。



生まれた時私は確かにこの国の公主であった。
がしかし捨てられ…私は砂漠でなにも知らず自由であった。
生まれたとき運命が決まったとは思わない…
もし運命があるとするならあの砂漠で新羅へ続く道を選んだこと。

こうしてここにいる。
その為に出会い別れた人たち…

大好きなかあさん、遠い世界を教えてくれたカターンおじさん、そして私を捨て私を認めた王様王妃様、頼りになってどこか憎めないチュクパン兄貴。

一緒にここを出ようと言ってくれたユシン郎。

度胸があって人でないような剣の腕何かを探し求めているかのようなピダム。

私の行く手を阻むミシル…そして姉上、私の幸せの為に命を落としたたった一人の姉さん。


出会いを思い別れを思いトンマンはその夜冷たい雪の上に眠るように静かに寝台に身を横たえた。


けれど、私が選んだ道は…やけに寒いな…


トンマンは眸を閉じた。






朝の光が公主の部屋に射し込む。

「公主様、ピダム郎がお見栄ですが…」

ソファの些か不満げな取り次ぎの声がする。

扉が開いてソファが入ってくるその後ろに待ちきれぬように入ろうとするピダム

「ピダム郎!」

ソファが止める間もなくひょこっと顔をのぞかせる


「ピダム…まだ着替えていない、少しだけ待っていろ」


寝衣のままのトンマンの姿に驚き顔を赤らめたピダムが慌てて後ろを向いた。

閉まった扉を見てトンマンは我知らず笑っていた。


トンマンはソファに見咎められようやく自分が笑っていることに気づいた。



トンマンは思う。 

此から先、幾つも別れも出会いもある、けれどきっと…

“ピダムお前は…私を笑顔にさせる者”


やはりローマへ行かなくてよかった…何故だか、不意にトンマンはそんな気がした。





雪の果て……

この時、この冬最後の雪がそっと朝日にあたって煌めき消えてゆく…


トンマンの面を伏せても隠しきれぬ微笑み。



春の訪い…


新羅の、花の頃はあと僅か。







*『雪の果て』お読み頂きましてありがとうございます。

“雪の果て”これは最後の雪という意味があります。



冬眠中で2月ほとんど更新もないのにコメントをくださったりここを訪れてくださる皆様ありがとうございます。


短いですがこのお話しをうさこの今月のお礼とさせて頂きたいと思います。



ぺこりん




別窓 | 愛だと知らず | コメント:2 | ∧top | under∨
| 新月の小部屋 |
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。